研究課題/領域番号 |
24540269
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸 直樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80462191)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 重力波 |
研究実績の概要 |
本年度は前景重力波源としてコンパクト連星の研究、および初期宇宙起源の背景重力波探査法の研究を進めた。これら二つの研究概要を以下に順に述べる。 まず前者に関しては重力波干渉計が観測する連星合体率の推定、軌道傾斜核の分布等データ解析に関連する基礎的事項の検討を行った。これらを見積もる際には、波源の天球上の方向、および軌道角運動量の向きに対して計4つの角度を取り扱う必要がある。これは数値計算上のコストが高く、従来はモンテカルロ法などによって取り扱われることが多かった。今回私は、重力波の偏光状態がこれらの評価においてどのような役割を果たしているかを吟味することによって、有効な摂動展開を新たに導出することに成功した。これにより、連星検出率等が非常に簡単な単純な2重積分により精度良く評価することが可能になった。私が作った摂動的評価法は幅広い応用が可能であり、重力波データ解析において今後も役に立つことが期待できる。 次に後者の初期宇宙起源の背景重力波について報告する。今年の前半には、CMB偏光観測プロジェクトBICEP2の報告をうけて、CMB観測と将来の重力波直接観測双方を組み合わせることにより、インフレーションポテンシャルの情報にどのように迫ることが出来るかを数値的に検討した。また、今年の後半には電磁波スペクトルのライン観測の歴史を検討したうえで、背景重力波のライン探査法を主としてデータ解析の立場から分析を行い、相関解析におけるデータの平均法が非常に重要になることを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前景重力波源の進化に関して当初計画していた摂動的解析法を新たに完成させ、様々な干渉計ネットワークに関して合体率の評価を行った。それをさらに発展させて軌道傾斜角の分布関数の評価を行うなどの成果をあげていると言える。しかし、昨年度はBICEP2の報告による重力波研究者間に生じた大きな混乱があり、初期宇宙起源の重力波の検出法の研究に関しては大幅な遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
2014年の冬にはBICEP2の報告が誤りであることがほぼ確定して、研究上の混乱はほぼ終息し、関連する研究の緊急性がなくなり、外的な研究環境も安定している。本研究計画は当初の予定より一年弱遅れたものの、2015年一月以降順調に遂行している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度はBICEP2コラボレーションが原始重力波起源のCMB偏光の観測結果を発表した。これは本研究計画に対しても重大な意味を持つものであり、この結果を進行中であったインフレーション重力波の研究に早急に取り込む必要性が生じた。その後2014年11月以降にBICEP2コラボレーションのデータ解析手法に大きな問題があることが明らかになり、進行中の研究を大幅に見直すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
BICEP2関連の混乱も2014年末にはほぼ終息し、当初の計画内容で研究を進めることが可能となった。ほぼ10か月遅れで研究を遂行する予定である。
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