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2012 年度 実施状況報告書

原子核ニュートリノ反応の精密理論解析

研究課題

研究課題/領域番号 24540273
研究種目

基盤研究(C)

研究機関大阪大学

研究代表者

佐藤 透  大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10135650)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードニュートリノ / 超新星 / 中間子生成 / 核子共鳴
研究概要

本研究では(A)超新星の爆発過程と少数核子系ニュートリノ反応および(B)GeV領域におけるニュートリノ原子核反応の課題をすすめる。
今年度、(A)ついて超新星の爆発過程における重陽子の関与するニュートリノ生成機構の研究を行った。ここでは重陽子の電子捕獲によるニュートリノ放出、2核子散乱におけるニュートリノ放出にともなう重陽子生成過程の解析を行った。超新星爆発シミュレーションの研究者から、コアバウンス後約150msにおけるスナップショットとして温度、核子、電子など各粒子の密度の情報の提供を受け、開発した重陽子反応解析をもちいてニュートリノ放出率を調べた。その結果、新たに考察した重陽子をふくむ反応過程が衝撃波の発展に重要な寄与をする可能性があることが示された。この新しい反応機構が、実際の爆発過程にどのように影響を受けるのかをさらに調べるため超新星爆発シミュレーションの研究者に成果を提供する準備を進めている。
(B)については共鳴領域におけるニュートリノ核子反応の解析を進めた。光子、パイ中間子をプローブとした核子における中間子生成反応の解析が進んだことから、この定式化を中間子共鳴の研究に応用した。またさらにPCACを用いた前方のニュートリノ反応の研究をすすめた。これまでデルタ共鳴以上の高いエネルギー領域におけるニュートリノによる中間子生成反応についてはほとんど理論的研究がなかったが、今回パイ中間子をプローブとした反応の結果を応用することにより、前方のニュートリノ散乱によるパイ中間子のみならずさまざまな中間子生成反応率に関する信頼できるデータを提供できることになった。これらの成果は2編の学術論文、5回の国際研究集会における招待講演において発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究目的にある(A)超新星の爆発過程と少数核子系ニュートリノ反応および(B)GeV領域におけるニュートリノ原子核反応、それぞれの課題についてほぼ当初の計画研究どおりに成果をあげることができた。
2核子散乱における重陽子、重陽子における電子捕獲反応など重陽子の関与するニュートリノ生成過程の解析コードを完成することができた。これにより超新星爆発の状態を与える温度、ケミカルポテンシャルなどの情報と組み合わせることにより当初の計画にあるニュートリノ生成率(Emissivity)の解析を完成することができた。
また核子共鳴領域における中間子生成反応模型が完成したことにより、ニュートリノ原子核散乱を記述する基礎となる素過程の模型を構築する準備を整えることができた。最初の応用として軸性ベクトル流部分保存(PCAC)を用い前方ニュートリノ散乱振幅をパイ中間子入射反応振幅との関係をつけることに着目しパイ中間子と核子の反応模型を直接応用することが可能となった。これにより、これまでの研究では行われていなかった、K,エータなど様々な中間子生成過程に対する信頼できる評価を与えることができた。
一方、ニュートリノフラックスを原子核反応模型の詳細に依存せず抽出する逆問題の解析方法の開発については、今年度始めて取り組んだ問題でもあり、問題の定式化をすすめさらに、現在は解析コードを作成中の状況にある。
これらの成果、研究の進展状況から全般的にほぼ目標を計画どおりに進めることができたと考えている。

今後の研究の推進方策

現在のところ、大きな理論的問題点が生じておらず、今後研究計画どおりに研究を進めていく予定である。
(1)ニュートリノフラックスを原子核反応模型の詳細に依存せず抽出する逆問題の解析方法の開発に関しては、さらにその実効性について解析を行い、反応模型と組み合わせた解析をすすめていく。(2)2核子の散乱におけるニュートリノ生成についてはコードをほぼ完成している。これを用い、超新星爆発における物質のパラメタを用いたニュートリノ放出率の評価を行い、この過程に関する従来の研究の正当性、新たに取り入れた効果の重要性に関する解析を進める。(3)4核子系におけるニュートリノ生成過程については、協力研究者による原子核構造解析が終了しつつある。ニュートリノ反応へ応用する研究連絡をおこない、解析を完成する。(4)GeV領域ニュートリノ原子核反応については、原子核における中間子の吸収、共鳴粒子の相互作用などを取り入れデルタ空孔模型を取り入れた反応解析を進める。

次年度の研究費の使用計画

研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初の予定どおりの計画を進めていく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Extraction of meson resonances from three-pions photo-production reactions2012

    • 著者名/発表者名
      S. X. Nakamura, H. Kamano, T.-S. H. Lee, and T. Sato
    • 雑誌名

      Physical Review

      巻: D86 ページ: 114012 1-11

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.86.114012

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neutrino-induced forward meson-production reactions in nucleon resonance region2012

    • 著者名/発表者名
      S. X. Nakamura, H. Kamano, T.-S. H. Lee, and T. Sato
    • 雑誌名

      Physical Review

      巻: D86 ページ: 097503 1-5

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.86.097503

    • 査読あり
  • [学会発表] Neutrino-nucleus reaction from a few hundred MeV to GeV region2013

    • 著者名/発表者名
      T. Sato
    • 学会等名
      Future Prospects of Hadron Physics at J-PARC and Large Scale Computational Physics in 2013(招待講演)
    • 発表場所
      Tokai, Japan
    • 年月日
      20130211-20130213
  • [学会発表] Baryon resonances and meson production reactions2013

    • 著者名/発表者名
      T. Sato
    • 学会等名
      Hadron physics with high-momentum hadron beams at J-PARC(招待講演)
    • 発表場所
      KEK, Japan
    • 年月日
      20130115-20130118
  • [学会発表] Nucleon Resonance from Coupled Channel Approach for Meson Production Reactions2012

    • 著者名/発表者名
      T. Sato
    • 学会等名
      Nucleon Resonance Structure in Exclusive Electroproduction at High Photon Virtualities(招待講演)
    • 発表場所
      Columbia, SC, USA
    • 年月日
      20120813-20120815
  • [学会発表] Dynamical coupled-channel approach for meson production reaction2012

    • 著者名/発表者名
      T. Sato
    • 学会等名
      International Workshop on new partial wave analaysis tools for next generation hadron spectroscopy experiments(招待講演)
    • 発表場所
      Camogli, Italy
    • 年月日
      20120620-20120622
  • [学会発表] Neutrino nucleus reaction in a few nucleon system2012

    • 著者名/発表者名
      T. Sato
    • 学会等名
      Neutrinos and Dark Matter in Nuclear Physics(招待講演)
    • 発表場所
      Nara, Japan
    • 年月日
      20120611-20120615

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公開日: 2014-07-24  

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