研究実績の概要 |
(1)超新星の爆発過程と少数核子系ニュートリノ反応:超新星爆発の環境下で、比較的物質密度の小さい領域において、よい近似でニュートリノ生成率を簡便に評価することができる、非縮退近似によるニュートリノ生成率公式を計画どおり導いた。これは超新星爆発シュミレーションを行っている研究者に提供し、ニュートリノ重陽子反応に関する研究成果を超新星爆発に応用し、発展させるために共同研究をさらに進めていく予定である。今年度はさらに物質中における重陽子の性質とニュートリノ反応の研究を進めた。超新星爆発では、通常の原子核物質密度程度から非常に密度の小さい領域までの、幅広い環境においてニュートリノが生成、吸収され、物質中のニュートリノ反応の解析が求められている。我々は、温度グリーン関数の方法を用い、T行列近似による定式化を行った。解析の結果、原子核物質密度の1割程度の領域では、2核子は束縛せず、ニュートリノ放出率が減少すること、さらに、これらの領域では重陽子が短寿命となることを示した。 (2)GeV領域におけるニュートリノ原子核反応:最大エントロピー法を深非弾性散乱領域への適応に関しては原子核パートン分布関数を用意する段階まで進んでいる。一方高エネルギー領域のニュートリノ反応については、重陽子におけるニュートリノによるパイ中間子生成反応の研究を行った。核子、パイ中間子の終状態再散乱の効果を取り入れた解析を行い、これまでのインパルス近似の妥当性を調べた。その結果nu + d ー>mu- +pi+ + p + nなど終状態2核子がpnペアとなる反応では核子間終状態相互作用を取り入れることが非常に重要であることが判明した。この反応はニュートリノによるパイ中間子生成過程に対する現在唯一の素過程に関するデータである。この研究はさらに発展させて、ANL,BNLの泡箱データの詳細な再解析を進めていく。
|