研究課題/領域番号 |
24540275
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
寺尾 治彦 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (40192653)
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キーワード | くり込み群 / ゲージ理論 / カイラル対称性 / 超対称性 |
研究概要 |
QCDのフレーバー数がコンフォーマルウィンドウと呼ばれる範囲にあると、量子論的にスケール不変な理論が実現する。ウィンドウの境界近傍の理論のダイナミクスは近似的にスケール不変な挙動を示しQCDとは大きく異なる。そのためウォーキングテクニカラー模型と関連して議論される一方、近年は格子ゲージ理論のシミュレーションが精力的に試みられており、大いに関心を集めている。 本研究目的のひとつは、コンフォーマルウィンドウ近傍でのダイナミクスについて、ウィルソン流の非摂動的繰り込み群を用いた解析を進めることである。これまでの先行研究として、カラー数とフレーバー数が大きい極限でのくり込み群方程式の定式化、およびそれを用いた非摂動ベータ関数の導出を行った。今年度は格子ゲージ理論のシミュレーション結果との比較を念頭に、コンフォーマルウィンドウ近傍でのカイラルオーダーパラメータの評価を汎関数くり込み群を用いて解析することを課題とした。そのために、多フレーバーQCDをHiggs-Yukawa系に拡張し、コンフォーマルウィンドウでのダイナミクスを評価する方向を考えた。 一方、Higgs粒子が発見され、しかもその質量が125GeVとかなり小さいことが分かった。この発見により、Higgs場の有効ポテンシャルの解析からその不安定性やHiggs場によるインフレーションなど議論されている。 そこで、今年度はこの両者に共通する基礎的な課題として、Higgs場の有効ポテンシャルの非摂動的評価について考察した。特に、摂動的くり込み群を用いて改善した有効ポテンシャルと、汎関数くり込み群により導出される有効ポテンシャルの関係について考察し、その結果を日本物理学会2013年秋季大会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、これまでに得た研究成果をもとに、多フレーバーQCDのコンフォーマルウィンドウの近傍でのオーダーパラメータの評価についての研究を進める予定であった。 しかし、ヒッグス粒子の発見に触発されて、また上記の研究の基礎固めという観点から、ヒッグス場の有効ポテンシャルの非摂動的解析について、大学院生との共同研究を始めた。これについては一定の進展が得られたが、そのため当初の研究目的の達成度は当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒッグス場の有効ポテンシャルの評価に関する研究と、多フレーバーQCDのコンフォーマルウィンドウの近傍でのオーダーパラメータの評価についての研究の双方を早急に進める。前者の研究では、標準理論におけるヒッグス場の有効ポテンシャルについて、非摂動的解析を行った結果を得ることを目標とする。後者については、スケール不変性の破れにおける特徴的なスケーリング則について、非摂動的ベータ関数から得られる評価と、直接非摂動的繰り込み群によって得られるオーダーパラメーターのスケーリングとの比較を行う。また、SU(3)QCD、SU(2)QCDにおける結果を、格子シミュレーションの結果と比較する。
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