研究課題/領域番号 |
24540276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石川 健一 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60334041)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 素粒子(理論) / 計算物理学 |
研究概要 |
本年度は計画にある前方後方代入を伴う逐次緩和法の前処理コードの開発と性能評価行った。具体的には以下の通りである。 オーバーラップ型作用の5次元有効作用形式のドメインウォール型係数行列に対してこの行列を係数行列にもつ大規模連立方程式を正規化した正規方程式に対しての逐次緩和前処理を行った。簡単のため1ノードでの計算に集中した。正規化した係数行列は格子点差分の間隔が2点離れた点も含むので逐次緩和法は自明でないが、Saadによる中間ベクトルを用いた正規化方程式に対する逐次緩和法を実装し共役勾配法に適用し計算時間と解ベクトルの収束までの反復回数を、これまで用いられてきたRed-Black前処理法による共役勾配法の結果と比較検討を行った。この比較には12^3 x 24, beta=5.7のクエンチ近似のゲージ配位を用いた。 反復回数については逐次緩和法前処理を用いた方が約3/4の反復回数で収束しており前処理は働いていることが確認できた。しかしながら、一反復に必要な計算量が逐次緩和法は、Red-Black法に比べて2倍必要なため、実際の全体の計算時間では7/6倍になって却って遅くなることが分かった。実際に計算量が2倍増えているにもかかわらず時間が7/6倍に伸びるにとどまっているのは中間ベクトルを用いたキャッシュ効率が高いためである。 1反復あたりの計算量が大きくなる原因について考察中である。具体的には逐次緩和法で格子点を順番にめぐり格子点上の未知数を更新する直前での中間ベクトルの計算で未知数の更新に関与しない無駄な計算が含まれていることが分かっている。この無駄な計算を取り除くには複雑な条件文が必要となることが分かった。 本中間結果については国際シンポジウム'Quarks to Universe in Computational Science (QUCS 2012)'にて口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正規化した係数行列に対する逐次緩和法の実装が困難であり、初年度のコード開発は1ノード版までが完成した。 1ノード版については性能評価も一部実施し、問題点が見えてきている。 Red-Black法の並列版と重複領域のある領域分割シュワルツ法を準備する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
逐次緩和法を用いた前処理は1ノード版であるが性能評価を実施し、問題点が見えてきている。 既に報告で述べたように無駄な計算を行わないようにするためには複雑な条件分岐による前方後方代入の制御が必要であり実装は困難だと予想される。 予備的に必要であった Red-Black 法は1ノード版はすでに比較のため作成しており、研究計画にあるように今後はRed-Black法の並列版と重複領域のある領域分割シュワルツ法を準備し、シュワルツ法と従来Red-Black法の並列性能の比較を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度に作成調査した逐次緩和法とRed-black法の比較検討の結果を国際会議Lattice 2013 にて発表する予定である。そのための旅費を計上している。 また、計算プログラム作成のためのコンパイラの更新のための予算も計上している。
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