研究課題/領域番号 |
24540280
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
橘 基 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30404122)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
平成24年度は、研究題目「中間バリオン数密度領域での相構造の統一的解明と中性子星物理への応用」に基づく研究計画として掲げた3点のうち、以下の2点に関してその成果を挙げることができた。 一つは中性子星内部に存在する可能性のあるクォーク物質が超伝導状態になった時に生じる、渦(vortex)形成とそのエネルギーの輸送を見積もることである。ここでは具体的にカラーフレーバーロックとよばれるクォークの超伝導状態を考え、その有効ラグランジアンを構成した上で散乱断面積を見積もった。散乱断面積を求めることで、クォーク物質のエネルギーが渦を通してどのように拡散するかを知ることができる。ここでの成果はイタリアの国際研究会QCD@Work2012で発表され、後にプロシーディングスに収められた。今後はここでの成果を中性子星に適用して、観測結果との比較などからクォーク物質の存在について知見を深めていくことを考えている。 もう一つは状態方程式の研究で、ここではこれまで経験的に理解されていた、中間バリオン数密度領域での核物質の気相-液相転移(gas-liquid transition)を、ゲージ/重力対応とよばれる新たな手法を用いた解析を行った。具体的には、強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)に双対(dual)な重力理論として酒井-杉本模型を考え、そこに現れるインスタントンとよばれる解を多粒子系に拡張し、そこでのエネルギー配位を調べた。その結果、気相-液相転移特有の密度の不連続な跳びを確かめることに成功した。今後はここでの解析をさらに高密度に拡張し、中性子星の質量や半径を求めることを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度に掲げた課題のうち2つについて、成果を発表することができ、残りの一つについてもその足がかりとなる成果を既に得ていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は国際研究会への参加や、九州内での共同研究を進めることにより、ほぼ期待通りの成果をおさめることができた。25年度に入ってすぐ海外の研究者との研究成果を発表し、いくつかの方面からの反響を既に得ている。これらのことから鑑みて、25年度も昨年度と同様に研究を進めていく形が良いと申請者は考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者の研究計画推進にとって一番重要なのは、研究交流による情報収集や研究打合せ、研究会や国際学会での研究発表である。その意味で25年度は今のところ2度の海外渡航を予定している。それに要する費用に研究費を使用することを計画している。
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