平成26年度は、研究題目「中間バリオン数密度領域での相構造の統一的解明と中性子星物理への応用」に基づく研究計画として掲げた研究内容のうち、以下の1点と、それとはまた新たに今回の研究課題遂行の中で生じたテーマに関して成果を挙げることができた。
ひとつはゲージ/重力対応、いわゆるホログラフィック原理を用いた、クォーク・ハドロン物質の相構造の解明である。これは今回の研究課題の中でももっとも中心的なものとなるが、ここでは特に「とじこめ」と「カイラル対称性」という2つの点に着目して解析を行った。より具体的には5次元の重力理論を考え、それが負の宇宙項の入った4次元の場の理論と等価であるというホログラフィック原理を用いて、QCDの物理量を解析した。直感的には負の宇宙項は負の真空エネルギーに相当し、それがQCDの非摂動的真空の役割を果たすと考えられる。ここではとじこめ-非とじこめ転移およびカイラル対称性回復の温度、中間子の質量スペクトルの温度変化などを考察した。我々の得た結果は、格子ゲージ理論による数値計算や、有効模型を用いた先行研究と比較することができる。
一方、前年度から新たに開始した、中性子星における暗黒物質の捕獲についての研究をさらに押し進めた。前年度に発表した結果は、定性的なものにとどまっていたが、今回暗黒物質と核子の相互作用の模型として具体的にはヒッグス交換模型を設定し、それによって先行研究とは異なる結果が得られる予測が立てられた。まだ国内学会の発表の段階で、これから論文として完成させる所存である。
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