研究課題/領域番号 |
24540281
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
安田 修 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50183116)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニュートリノ振動 / フレーバー混合 / ニュートリノ質量 / 長基線ニュートリノ実験 / CP非保存 |
研究概要 |
ニュートリノ長基線実験で、ν(μ)→ν(e)と反ν(μ)→反ν(e)の確率が測定できたとしても、CP位相が必ずしも一意的に決定できない、というパラメーター縮退の問題が以前から知られている。特に深刻なのは、階層性の縮退で、正常階層か逆階層かで、CP位相の真の値が大きく影響されることも知られている。2012年に第三番目のニュートリノ混合角θ(13)が決定されたのを受け、この問題が解決できるかどうかが具体的に議論できるようになってきた。そこで研究代表者が2004年に提唱した新しいプロットの方法により、T2Kの第二段階やNova等の近未来の長基線実験で、パラメーター縮退の解決の可能性を議論した。その結果、T2KではCP位相が(90±20)度という特別な値を取る場合以外には階層性の縮退を取り除くことができず、基線の長いNovaも、ほとんど同じ情報しか与えないことが明らかとなった。 ニュートリノの伝播に新物理の効果がある場合の現象論では、eとτの成分がもっとも制約が弱く、その効果は10GeV程度のエネルギー領域で通常の振動確率との違いが顕著となることが知られている。エネルギーが10GeV程度のニュートリノを観測し、物質効果をより良くテストするには基線が長い大気ニュートリノ実験がのぞましいが、現在のスーパーカミオカンデ実験は残念ながら統計量がまだ十分とは言えない。そこで、将来のハイパーカミオカンデ実験について新物理のパラメーターに対する感度を数値的方法により議論した。解析に当たっては、制約の強いμ成分を0とし、高エネルギー大気ニュートリノからの制約ε(ττ)=|ε(eτ)|^2/(1+ε(ee))を仮定して計算した。系統誤差を簡略化した計算の結果では、パラメーターε(eτ)に対しては、これまでの制限を一桁程度改善できることがわかった。詳細な計算は現在も進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、大気ニュートリノを使った計算では、スーパーカミオカンデグループによるモンテカルロ計算の再現をするつもりでかなりの努力を費やした。しかし、その再現は結局難しいことが結論された。そこで、長基線実験の現象論でこれまで多くの研究者によって行われているように、一貫して自分たちの理論値を用い、新物理がない場合とある場合との違いとしてsignificanceを評価することに方向転換した。方針が変わったことにより若干の遅れは出たが、近いうちに結果が出る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、原子炉ニュートリノ異常を考慮に入れた新段階におけるニュートリノ振動の研究、(3+2)-スキームに関する現象論、(3+1)ースキームにおけるパラメーター縮退、非標準物質効果がある場合のパラメーター縮退等の課題について、首都大の大学院生・海外の共同研究者とともに研究を進めて行く方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は、国際会議等の参加登録費が当初の計画よりも安くなったため、若干の残金が生じた。 この残額を含め、今年度も、昨年に引き続き、国際会議等で研究成果の発表を多くするために、国内・海外への旅費と会議参加費にほとんどの予算をあてる予定である。
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