研究課題/領域番号 |
24540282
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
石原 秀樹 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80183739)
|
研究分担者 |
古池 達彦 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (40286646)
|
キーワード | ブラックホール / 光線 / 軌道角運動量 / 測地線 / 光渦 |
研究概要 |
短波長近似のもとでは,光は曲がった時空中をヌル測地線に沿って伝播することを示すことができる.円偏光の光が回転するブラックホールのまわりを伝播するとき,短波長近似に波動性を加味すると,光はヌル測地線からずれるという,先行研究がある. 一方,物性物理学における光学の研究では,波の位相一定面が螺旋面をなし,光軸のまわりに軌道角運動量をもつ,いわゆる〝光渦”の研究が盛んになされている.今年度は,回転するブラックホールのまわりを光渦が伝播するときの光渦の軌道について研究した. 光渦のねじれた波面に垂直なベクトルを光軸のまわりで平均化して平均化伝播ベクトルを定義し,ここに短波長近似を用いることによって,曲がった時空中の平均化伝播ベクトルが満たすべき微分方程式を導出した.この方程式によると,光の伝播と垂直な方向に定在波が立つことによって光渦は小さな質量をもった粒子の様に振る舞うこと,また,回転するブラックホールの様に時空が角運動量をもつ場合は,方程式に時空の角運動量密度と光渦の角運動量の間の相互作用項が存在するため,軌道が測地線からずれること,の2点が明らかになった. このことから,ブラックホールによる光の彎曲と,光のもつ渦度を観測することによって,ブラックホールの角運動量,つまり,カー・パラメーターを決定することができる.このことは,これまでにない新しいカー・パラメーターの決定方法を提示したことであり,重要な結果である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
曲がった時空中において光渦の平均化伝播ベクトルが満たすべき微分方程式を導出した.この方程式によると,光渦は小さな質量をもった粒子の様に振る舞うこと,また,回転するブラックホールのまわりでは,軌道が測地線からずれることが明らかになった. このことは,ブラックホールの角運動量パラメーターを決定する新しい原理を提示したことを意味する.
|
今後の研究の推進方策 |
回転するブラックホールのまわりでの光渦の軌道が測地線からずれることを光の入射方向ごとに調べ,ずれの程度を定量的に評価する.これより,ブラックホールの角運動量パラメーターの観測について具体的な提案を目指す.
|
次年度の研究費の使用計画 |
科研費補助金の有効使用を考えると,次年度,研究成果を国際会議などで公表するための旅費として繰り越した方が良いと判断したため. 研究成果を国際会議などで公表するための旅費として用いる.
|