• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

宇宙項問題と重力ループおよびインスタントン補正

研究課題

研究課題/領域番号 24540285
研究種目

基盤研究(C)

研究機関中央大学

研究代表者

稲見 武夫  中央大学, 理工学部, 教授 (20012487)

研究分担者 北澤 良久  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (10195258)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード国際研究者交流 / 交際情報交換 / 国際共同研究
研究概要

素粒子論に基づいた宇宙論の研究での大きな問題として,1)初期宇宙のインフレーションの機構(インフラトンの模型),2)現在の宇宙項Λの大きさ(極端な小ささ)を如何に説明するか--宇宙項問題の2つが有る.
この2つの問題はどちらもド・ジッター (dS) 時空上の場の量子論で扱う必要があり,両者は密接に関係している.dS 時空上の場の理論における,摂動論的および非摂動論的効果がインフレーション,宇宙項にどのような効果をもたらすかは,未解明な面が多い.昨年からこれらの問題の研究を始めた.以下の具体的な問題を研究中. a) 宇宙項への dS 時空上の重力ループ補正を計算する.研究の枠組みができた段階であり,現在計算を進めている.
b) 低次元場の理論の toy 模型で上の問題を調べる.具体的には3次元φ6乗,2次元非線形シグマ模型(NLSM),Liouville 理論を考えた.計算は終わったが,計算法と結果の見直しをしている.
c) 2次元非線形シグマ模型(NLSM),Liouville 理論は可積分な場の理論である.これらの場の理論を dS 時空へ拡張した時に,可積分性が保たれるかという,数理物理の問題の研究を始めた.新しい,面白い研究の展開が予想される.Liouville 理論,弦理論の専門家数人が強い興味を示し,た害の間で議論を始めている.
d) 摂動論を越えて,非摂動効果として4次元Yang-Millsインスタントンからの補正も研究している.部分的な結果が得られている.
a) は研究会で口頭発表が数件,掲載論文が1編ある.b) ~ d) は国内,国外の研究会で口頭発表.その他に,a) は分担者による掲載論文が2編ある.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請時で,「研究目的(概要)」に以下のように書いた. 素粒子の統一理論から宇宙物理を研究する時,大問題が2つ有る.初期宇宙インフレーションの素粒子模型は何か,宇宙項Λの値が桁外れに小さいのは何故かという疑問(宇宙項問題)である.両方の研究に共通して,de Sitter (DS)空間上の場の量子論の方法が必要となる.
この研究計画では宇宙項問題の解決を目指し,量子補正による赤外遮蔽によってΛの小さな値が説明出来る可能性を調べる.そのために,宇宙項Λへの i) 摂動的な量子補正, ii) 非摂動的な補正を計算する.稲見の重力理論とゲージ理論における以前の摂動計算は,見方を変えて i) の研究で役に立つ.ii) はヤン・ミルズおよび重力インスタントンの効果を考えている.全く新しい着想であり,予想を超える結果も期待できる.iii) 稲見がこれまでに発展させた高次元,低次元場の理論の観点も取り入れ,宇宙項の役割に新しい見方を持ち込めるであろう.
「研究実績」で記したように,i) は a) の項目でで研究が進みつつ有り,口頭発表と掲載論文が1編有る.ii) は d) で部分的な結果が得られている.iii) は b) と c) で研究結果が出ていて,口頭発表も数件有る.iii) に関しては,新しい問題を掘り起こし, 当初の計画を越えている面も有る.

今後の研究の推進方策

dS 空間上の場の量子論で,量子効果がインフレーション,宇宙項にどの様な効果をもたらすかは世界的に広く研究されて来たが,未解明な部分が多く,研究は試行錯誤の状況である.稲見は1年以上前に幾つかの面からこれらの研究を始めた.部分的な結果を幾つか得ている.今年度もこの研究を先に進める.
a) 宇宙項へのループ補正を計算する.特に重力ループの補正の計算に結果を出したい.b) 低次元場の理論の toy 模型で上の問題を調べる研究は計算が進んでいる.その結果をまとめる.c) 2次元 dS 空間上で,可解模型が作れるかという問題に答えを出したい.この問題は数理物理的な面を含めて新しい研究を行う.d) 非摂動効果として,4次元でYang-Mills インスタントンの効果は部分的な結果を得ている.2次元 NLSM でインスタンの効果も評価する.
a) の研究は清華大学の小山陽次氏との共同研究を続ける.清華大学の Chong-Sun Chu 教授殿研究協力を始めている.c) の研究は静大 D1 の鈴木真理子氏との共同研究である.2ヶ月前から Caltech の中山優氏と情報交換を始め,新しい観点が入り,大変有益である.共同研究を行って面白い結果を得たい.

次年度の研究費の使用計画

稲見(代表者)と北澤(分担者)は研究テーマ a) を共有している.互いにテーマが同じ掲載論文も数編有る.昨年は互いに相手を訪ねてセミナー・議論を何回か行っている.今年度も同じように意見交換を行う計画であり,国内旅費に300,000円を計上.
共同研究者の小山陽次氏が清華大学(台湾)に移り(研究員),Chong-Sun Chu氏(清華大学)とPei-Ming-Ho氏(台湾大学)との研究協力も進む.そのために外国旅費に500,000円を計上.専門家を中大によび,セミナー・議論を行う.専門的知識の提供に対する謝金,研究補助に対する謝金として,350,000円計上.残額310,003円は設備備品費とその他である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Radion Inflation in Higher-Dimensional Gravity Theory2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Fukazawa, T. Inami, Y. Koyama
    • 雑誌名

      Prog Theor and Exp Phys

      巻: 2013 ページ: 021B01(1-6頁)

    • DOI

      10.1093/ptep/pts008

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Soft gravitons screen coupling in de Sitter space2013

    • 著者名/発表者名
      H. Kitamoto, Y. Kitazawa
    • 雑誌名

      Int. J. Mod. Phys. Conf. Ser.

      巻: 21 ページ: 161-162

    • DOI

      10.1142/S2010194513009616

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Scheme dependence of quantum gravity on de Sitter background2013

    • 著者名/発表者名
      H. Kitamoto, Y. Kitazawa
    • 雑誌名

      Nucl Phys

      巻: B873 ページ: 325-342

    • DOI

      10.1016.nuclphysb.2013.10.19

    • 査読あり
  • [学会発表] ドジッター時空上のグラビトンループの宇宙項への寄与2013

    • 著者名/発表者名
      稲見武夫,小山陽次
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      京都産業大学
    • 年月日
      20130911-20130914
  • [学会発表] 提示現場の理論における宇宙項Λの赤外遮蔽効果 II2013

    • 著者名/発表者名
      鈴木真理子,稲見武夫,小山陽次
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      京都産業大学
    • 年月日
      20130911-20130914
  • [学会発表] 高次元重力理論の量子効果と時空の4次元性2013

    • 著者名/発表者名
      深澤裕一,稲見武夫,小山陽次
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 発表場所
      京都産業大学
    • 年月日
      20130911-20130914

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi