研究課題/領域番号 |
24540285
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
稲見 武夫 中央大学, 理工学部, 教授 (20012487)
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研究分担者 |
北澤 良久 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (10195258)
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キーワード | 宇宙項 / de Sitter空間 / 量子重力 / 赤外発散 / Liouville理論 |
研究概要 |
素粒子・宇宙論の大きな問題として,1)初期宇宙に起きたと考えられている,インフレーションの機構を明らかにする,2)現在の宇宙項(別名 dark energy)の極端な小ささを以下に説明出来るか(宇宙項問題),の2つが有る.この問題はド・ジッター(de Sitter, dS)時空上の場の理論で扱う必要が有り,2つの問題は密接に関係している.dS 場の理論の際立った特長は,量子補正を計算すると赤外(IR)発散が現れることである.それが宇宙項問題の鍵だと思われている. 3年前からこれらの問題の研究を始めた.今年度もこの問題の研究を続けて,以下のような部分的な結果を得ている.a) 2次元で Liouville 場+matter 場の量子論を定式化し,4次元の量子重力理論に対するtoy 模型を提唱した.b) matter 場としてφ^4 理論を考えて,one-loop および2-loop 量子補正をを計算している.その途中で,中山優氏が新しく共同研究メンバーに加わった.量子補正のIR 発散をどう扱うかが問題の中心であるが,彼は相殺項で扱う新しい方法を提案し,c) この方法を試みている.後の2つの研究は続行中である. 4次元のdS 量子重力理論の宇宙項問題の基礎であり,多数の研究者による活発な研究にも関わらず,意見の一致が得られていない.d) 我々は重力ループの計算法についてやっと考えがまとまった所で,計算に入る段階である. a) ~d) いずれも口頭発表と論文投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
稲見は長い間にわたり,a) 曲がった時空上の場の量子論の摂動論,b) 高次元重力理論のloop 効果の研究,c) 低次元AdS (anti de Sitter)場の理論の研究を行って来て,成果が有った.さらに,近年はd) 高次元ゲージ理論,重力理論に基づいた宇宙のインフレーション模型を提唱した.ds Sitter 場の理論と重力理論は高度なテーマで,世界的に研究の進みが遅い.稲見は上の豊富な経験を生かして,loop 計算,重力loop の評価が進むと予想していた. dS 空間上の場の量子論はMinkowski 空間やAdS 空間とは違った計算法の難しさが有る.さらに,ホライズンと関連して,空間遠方での境界条件に伴う概念的な問題も有った.それらの計算方法と概念的な問題をきちんと理解するのに時間が掛かかり,研究の進み方が遅れた. 4次元のdS 量子重力理論は,今でも多数の研究者の間で意見の一致が得られていない.これらの過去の研究をきちんと理解し,自分たちの考えをまとめる迄に時間が掛かり,研究の進み具合が予想以上に遅くなった.
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今後の研究の推進方策 |
上に書いたように,準備研究に時間が掛かったが,低次元dS 場の理論の研究は定式化が出来ている.具体的な計算も終わりの段階に有る.数ヶ月の期間で結果が出ると考えている. 4次元のdS 量子重力理論は,過去の研究の理解とまとめがやっと出来た.最近,外国で共同研究者と会って,計算の進め方について打ち合わせが出来た.重力loop の計算はかなり大変なので,半年間くらいの期間を想定している.さらに,純粋に量子重力loop を扱うのは難しい面が有り,先ずmtter +重力のloop 計算を行うという方針をとる.それによって見通しよく計算を進めることが出来る.
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次年度の研究費の使用計画 |
分担者の北澤良久氏(KEK)が昨年一時的に体調を崩されて,休養を取られました.その期間と前後は国内・国外出張を控えられていました.そのために初めに予定していた旅費などを使用せず,次年度に繰り越しました.. 北澤良久氏はその後体調が回復し,普段の研究活動に復帰しました.北澤氏の共同研究者である北本氏が昨年から外国の研究機関に移りました.次年度使用額(B-A)の多くは北澤氏の国内・国外への出張に使用を考えております.
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