重力定数 G は、重力の強さを決める基本的な物理定数である。しかしながら近年、統一理論や重力理論の変更の可能性の観点から、その時間変化の可能性が考えられている。他の3つの相互作用(電磁気力、弱い力、強い力)と比べて、重力は極端に弱く、長距離・大質量の場合に効果が顕著になる力である。星や宇宙の構造・進化においては重力が決定的に重要な役割を果たす。 素粒子の統一理論の有力候補であるひも理論を含む変更された重力理論では、一般的に重力定数が変化しうる。そこで、様々な観測による基本定数の時間変化への制限が理論構築・棄却に大きな役割を果たしうる。 本年度は、重力定数が変化する重力理論(たとえばスカラーテンソル重力理論)と共形変換で関係づけられるアインシュタイン理論での宇宙論における観測量の関係を研究した。一見すると、共形変換で両者の間の観測量は異なるように見られるが、観測量の定義並びに次元量の変換を丁寧に考察することにより、両者の間で観測量は全く変わらないことが明らかになった。また、二体のブラックホールの「影」の構造を解析的および数値的に求め、影の形状は1体の場合の単純な重ね合わせとは異なる複雑な形状を持つことを明らかにし、形状はブラックホールの間隔や質量に依存することが分かった。さらに、宇宙の加速膨張の観測に関連して、スカラー場によるダークエネルギーモデルについて、新しい超新星の最新の観測データやバリオン音響振動の観測データを用いて、幅広いクラスのスカラー場ダークエネルギーモデルに対する観測的制限を与えた。
|