研究課題/領域番号 |
24540289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
和田 隆宏 関西大学, システム理工学部, 教授 (30202419)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 |
研究概要 |
平成24年度は、断裂中性子に関して様々な進展が得られた。平成24年5月にN. Carjan氏が来日し、関西大学に6週間にわたって滞在した。これに合わせて、M. Rizea氏を招へいし様々な議論を行うことができた。Carjan氏の断裂中性子の放出確率の計算などを参考にしながら断裂中性子の角分布の計算に用いる種々のパラメータの適切な値を検討した。また、Rizea氏とは断裂中性子の計算に用いる時間依存シュレディンガー方程式において境界での反射による計算精度の低下を防ぐアルゴリズムについて議論し、新しい方法を開発した。これらの成果は、国際会議や国内の学会において公表し、現在論文としてまとめている。また、Carjan氏、Rizea氏と共同で、より現実的な初期条件を用いた断裂中性子の角分布の計算を行った。核分裂片の変形の取り扱いなど、更なる改良が必要であるが、断裂中性子の角分布を予言し、実験によって断裂中性子の多重度を求める手掛かりを与えるための着実な進展が得られた。 また、核分裂片の質量分布や運動エネルギー分布の多次元ランジュバン方程式による研究では、平衡変形から鞍部点を経て分裂に至る様々な原子核形状を柔軟に記述するパラメトリゼーションについて検討を行った。現在は、4つのパラメータによって核形状を表現しており、典型的な分裂経路に沿ってのエネルギー変化(巨視的エネルギー部分と微視的な殻補正エネルギー)について検証を行った。ランジュバン方程式を適用するには平均経路のみでなくその周りの多様な形状についてエネルギーや輸送パラメータを求める必要があり、その精度について検討を続けている。一方、ランジュバン方程式による計算のためには計算機資源が相当程度必要となるが、現在保有している計算機では圧倒的に不足するため東京工業大学の千葉聡氏らと共同して、計算機資源の確保を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の項で述べたように、断裂中性子の角分布の研究においては、共同研究者であるCarjan氏、Rizea氏との議論を通じて中性子の初期分布を含む計算のパラメータについて検討し、断裂中性子の角分布を予言した。これは、当初の研究計画に沿ったものである。さらにこれと並行して、時間依存シュレディンガー方程式を効率的に解くための新しいアルゴリズムを開発し、テストケースについてその有効性を確認している。現在はこれを実用するためのプログラミングを行っており、順調に進んでいる。こちらの方は、研究計画時点では予想していなかった成果であり、計算の高速化や高精度化に寄与すると期待している。一方で、核分裂過程の多次元ランジュバン方程式による研究では、本格計算のための計算機資源の確保に困難があった。これに関しても、東京工業大学の千葉研究室との連携により一定のめどができている。
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今後の研究の推進方策 |
断裂中性子については、光学ポテンシャルを含む時間依存シュレディンガー方程式による角分布の研究が順調に進展しているので、これをさらに進める。具体的には、断裂中性子の発生メカニズムを含めて断裂中性子の分布の初期値をより定量的に検討する。また、角分布だけでなく断裂中性子のエネルギー分布(スペクトル)も実験を行う上での重要な情報となるのでこれについても研究を進める。 核分裂過程については、多次元ランジュバン方程式による計算に必要な計算機資源を確保することがまず必要であり、東京工業大学との連携を第一候補として取り組んでいく。また、現在の枠組みでは分裂片の陽子と中性子の比率は親核のものと同じと仮定しているが、新たな自由度を導入することで同位体分布についても計算できる枠組みを構築する。ただし、計算量はさらに増えるため実際に適用するには工夫が必要となるだろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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