研究課題
加速器を使った素粒子実験は超高度化・超精密化し、高い精度の測定データが得られるようになってきた。2012年には、欧州原子核研究機構(CERN)のLHC加速器でHiggs粒子が発見され、素粒子物理学は新たな局面を迎えている。今後は標準模型からのズレの測定や標準模型を超える模型での新粒子の探索など測定データをさらに精密に解析することが求められる。本研究の目的は、そのような超精密解析に対応できる精度の良い理論測定値を得るため、2ループ高次補正まで含んだ素粒子反応断面積を求める手法を開発することである。我々の手法は、ファインマン・パラメータで表示された高次ループ積分を多次元数値積分と数値外挿法により完全に数値的に計算するというもので、柔軟性が非常に高くマルチループかつマルチレッグのファインマン・グラフにも対応できる。以下では、この計算手法をDCM(Direct Computation Method)とよぶ。平成24年度には、2ループ積分で外線の数が2、3、4(以下、2、3、4点という)で内線の質量が重い場合を例にDCMの基本性能を確認した。並行して、計算時間短縮のために並列計算アルゴリズムの研究を進めた。平成25年度には、並列アルゴリズムを実装し、2ループ2、3、4点積分を例に、その効果を検証した。検証はマルチコア計算機およびスーパーコンピュータを用いて行い、計算時間が大幅に短縮されることを確認した。並列効果のスケーラビリティは高く、さらにコア数の多い計算機を用いれば一層の時間短縮が期待できる。平成26年度には、赤外・紫外発散をもつ2ループ2、3点積分を数値的に取り扱えるようDCMの機能向上を行った。あわせて、数値計算時に発生する桁落ち等に対応できるように多倍長精度計算の研究も進めた。現状では、4倍、6倍および8倍精度でループ積分の計算が可能となっている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (2件)
Journal of Physics: Conference Series (JPCS)
巻: - ページ: 1,8
情報処理学会研究報告, IPSJ SIG Technical Report
巻: 2015- HPC-148 ページ: 1,7
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電子情報通信学会技術研究報告 IEICE Techinical Report
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