研究課題/領域番号 |
24540295
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
福田 善之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40272520)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 2重ベータ崩壊 / ニュートリノ質量 / ジルコニウム / 素粒子実験 |
研究概要 |
ニュートリノを放出しない2重ベータ崩壊の観測を目指して、ジルコニウム96を用いた発光性液体シンチレータの開発を行った。これまでに、トリアジン基を導入したキノリノール錯体を合成し、ベンゾニトリルに2wt.%溶解することを確認した。また、発光スペクトルを測定し503nmにピークがあること、そして吸収スペクトルは320nmと410nmにピークがあることを確認した。実際にベンゾニトリルをベースとしてトリアジン基キノリノール錯体とPO/POPOPを溶解させた液体シンチレータを作成したところ、従来のキノリノール錯体による液体シンチレータに対して発光量が2.7倍に達した。しかし、発光波長が500nmであることから、より短い波長に発光する錯体として、ODZ錯体を選んだ。実際、ジルコニウム・ODZ錯体を合成したところ、発光波長は430nm、吸収は270nmと320nmにピークがあることがわかり、期待通りの発光波長を得ることができた。また、ベンゾニトリルに5wt.%の溶解度があることもわかった。そこで、ベンゾニトリルベースの液体シンチレータを作成し、γ線による発光量を測定した。その結果、ODZ錯体を入れない場合のサンプルに比べて、発光量はおよそ40%になることがわかった。トリアジン基の場合がおよそ22%であったことから、発光量はおよそ2倍に改善することがわかった。しかし、ベンゾニトリルの発光が290nmにあることから、ODZ錯体の吸収ピークと合致しておらず、おもにPPOの発光である320nmの吸収で発光していると考えられる。その結果、270nmの吸収による発光効率は30%~60%程度と予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに合成したジルコニウム・ODZ錯体の発光波長が430nmであり、予想通り光電子増倍管に感度のある波長帯に発光することがわかった。また、溶解度もベンゾニトリルに対して5wt.%を達成した。しかし、吸収波長が予想より短い270nmにあり、溶媒の発光波長と合致しないという課題が発生した。
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今後の研究の推進方策 |
ジルコニウム・ODZ錯体の吸収波長と溶媒の発光波長を合致させるため、発光波長がもっと短い溶媒を選び、液体シンチレータサンプルを作成し、放射線による発光量の計測を行う計画である。また、発光量の増加を目指し、2次シンチレータの発光波長を変えるために、PPOとは別のp-ターフェニルなどの発光材の組み合わせを試す計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度合成したジルコニウム.ODZ錯体が5gであることから、次年度に10g以上のジルコニウム・ODZ錯体を合成するために、企業に合成を委託する経費を支出する計画をしている。
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