研究課題/領域番号 |
24540295
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
福田 善之 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40272520)
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キーワード | ニュートリノ / 2重ベータ崩壊 / ニュートリノ質量 / ジルコニウム / ODZ錯体 |
研究概要 |
ニュートリノを放出しない2重ベータ崩壊事象の探索実験の実現を目指して、ジルコニウム96を用いた発光性錯体を含有した液体シンチレータの開発を行った。これまでにジルコニウムODZ錯体を合成し、発光スペクトルのピーク波長は430nm、吸収スペクトルのピーク波長は250nm、290nmと340nmにあり、最大発光は250nmの励起光によるものであった。それまで液体シンチレータの溶媒として使用していたベンゾニトリルの発光のピーク波長が290nmであったことから、電子のエネルギーを効率的に錯体の発光に移動していないことが問題であった。ところが、数ヶ月後に発光スペクトルを再測定したところ、ジルコニウムODZ錯体の発光の内、250nmにピークを持つ発光が無くなってしない、290nmと340nmの発光だけになってしまった。また、ベンゾニトリルにジルコニウムODZ錯体を溶解させた液体シンチレータサンプルは、3ヶ月後には赤色に変色していることがわかった。このことから、ODZ錯体は安定ではなく、かつ極性の高いベンゾニトリルでは錯体を壊してしまうことが疑われた。そこで、発光波長のピークが280nmであるアニソールに対する溶解度を調べたところ、ベンゾニトリルの5w.t.%には達しなかったが、2w.t.%は溶解することがわかった。そこで、アニソールを用いた液体シンチレータサンプルを作成することにした。γ線を照射した結果、ODZ錯体による発光が観測されたことから、アニソールに対する発光効率を求めた、アニソールの発光スペクトルに対すし、ジルコニウムODZ錯体の吸収スペクトルとPPOの吸収スペクトルが概ね近いことから、それぞれの吸収がモル数に比例すると仮定し、吸収スペクトルの形状を考慮して発光量を求めたところ、ジルコニウムODZ錯体の発光効率は13.2%であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に合成したジルコニウムODZ錯体に観測された最大発光を示す発光スペクトルが、数ヶ月後において観測されなくなったため、この発光による液体シンチレータの試作が行われていないため。
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今後の研究の推進方策 |
ジルコニウムODZ錯体1gを再合成を行い、250nmに観測された最大発光スペクトルの有無を確認するとともに、その波長に合致する溶媒を用いた液体シンチレータサンプルの試作を行う。また、錯体が非常に不安定である可能性があるため、不活性ガス等の封入による保存を行うとともに、定期的な発光スペクトル観測を行う。一方、発光性錯体としての性質を見極めるため、1光子による発光効率である量子収率の測定を行う。測定には、量子収率測定の専用の測定器を使用する必要があるため、東北大学金属材料研究所が保有しておる機材を使用する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
合成したジルコニウムODZ錯体に観測されていた250nmをピークとして吸収による発光が消失したことにより、再度合成することを想定していたが、消失した原因の特定や、その他の吸収による発光効率を求めることを優先したため、まだ再合成を行っていないため。 次年度にジルコニウムODZ錯体を1gだけ再合成し、当初観測された250nmの吸収が存在するか確認するとともに、存在する場合は、その吸収に合致させた溶媒による液体シンチレータを試作する計画である。
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