研究課題/領域番号 |
24540302
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 修 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 助教 (20377964)
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キーワード | ニュートリノ / ダブルベータ崩壊 |
研究概要 |
本研究の目的は原子核乾板を用いた解析において通常使われる高エネルギー荷電粒子による飛跡検出の邪魔になる低エネルギー電子、アルファー線などの飛跡を積極的に同定することである。数MeV程度の低エネルギーの電子の飛跡は原子核乾板1枚の物質量でも電磁多重散乱の為にぐにゃぐにゃに折れ曲がった飛跡になる。一方でアルファ線は電離損失が大きく飛跡の濃さは大きいが原子核乾板の乳剤層に数10ミクロンの短い飛跡を残すのみである。通常の高エネルギー物理学の研究においてはこれらの飛跡は高エネルギーの最小電離粒子検出のノイズになる。 本研究では低エネルギーの電子飛跡を積極的に捉える事でダブルベータ崩壊実験など低エネルギーの電子を高検出効率で捉える実験の足掛かりとする。またアルファー線の同定はアルファー線と同様に濃い飛跡を残す中性子による反跳陽子の飛跡の検出の基礎とする。 H24年度は、読み出し断層映像の層数を従来の16層から32層に増やすことでノイズ量を従来比の10分の1になることを確認した。H25年度はアルファー線の飛跡認識に取り組み人がマニュアルチェックで確認した長さ20ミクロン以上のアルファー線に対して90%以上の確率でアルファー線と同定できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原子核乾板の飛跡認識におけるノイズ飛跡を断層映像数を増やすことで従来比の10分の1にできている。また電離損失が大きい事でノイズ飛跡を残してしまうアルファー線の同定に取り組み90%程度の効率でアルファ線と同定できることを示した。また低エネルギー電子飛跡の分析に関して線分情報のクラスタリング手法のおおよその見込みがついている。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は低エネルギー電子の飛跡のトラッキングに取り組む。低エネルギー電子飛跡は電磁散乱によりぐにゃぐにゃに折れ曲がっているので直線でのトラッキングをすると複数の線分として認識される。乳剤1層(40ミクロン厚)分のトラック線分は実在の1トラックについて複数発生するため角度、場所が近い線分はクラスタリングして1つにまとめている。低エネルギーの電子による線分情報はもとの電子の折れ曲がりを表現している事が期待され、クラスタリングによっても1個の線分にはまとめられず複数個の線分としてトラッキングされている。この特徴を生かしたトラック線分のクラスタリングの最適化及びクラスタリング後のトラックの数の分布から積極的に低エネルギー電子の飛跡の検出する。高エネルギーの直線飛跡、低エネルギーの電子による飛跡とフォグと呼ばれるランダムに分散した1個の銀粒子のチャンスコインシデンスによるノイズ飛跡の3つを分別する。手法として全自動飛跡認識装置で取得したトラックデータに対し人間が顕微鏡で確認した高エネルギー粒子の飛跡、低エネルギー電子の飛跡、フォグのチャンスコインシデンスの飛跡を正解として与えクラスタリング時の場所、角度差の許容値のチューニングおよび疑似トラック線分の数をトラック種別ごとに系統的に解析し、データの1飛跡に対しトラック種別を返すプログラム関数を作成する。
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