本研究では、大強度陽子加速器施設 (J-PARC) 50GeV 陽子シンクロトロン実験施設において、大強度中間子二次ビームを活用した2重荷電交換反応を測定することで、成功例のない中性子ドリップライン近傍のラムダ・ハイパー核生成を目指す実験を実施し、その核構造について研究を行った。 平成26年度は、平成24年度にデータ取得した J-PARC E10 Phase-1 実験のデータおよび理論解析を精力的に進めた。理論解析では、2重荷電交換反応によるラムダ・ハイパー核生成、シグマ・ハイペロン準自由生成、非束縛状態のラムダ・ハイペロン生成を統一的に取り扱う枠組みを用いた解析を世界に先駆けて行った。この解析は2重荷電交換反応の反応機構を知る上で不可欠であり、結果は国際学会等で報告を行った。 本研究実施期間全体では、平成24年12月から平成25年1月にかけ、典型的な中性子過剰ラムダ・ハイパー核である水素6ラムダ(6ΛH)生成を目指す J-PARC E10 Phase-1 実験を実施した。平成25年度にはデータおよび理論解析を精力的に行い、水素6ラムダの核構造および2重荷電交換反応の反応機構について研究し、学術論文として結果を公表した。上記の平成26年度の研究では、2重荷電交換反応の反応機構についてより詳しい知見を得ることが出来た。また、開発したシンチレーション・ファイバ飛跡検出器および半導体飛跡検出器が、高計数率対応の検出器として高い能力を発揮することが実証できた。なお、J-PARC 50GeV 陽子シンクロトロン実験施設では、平成25年度初めに発生した放射線事故後の対策のため、平成26年度も施設の利用再開が出来なかった。そのためもう一つの中性子過剰ラムダ・ハイパー核ヘリウム9ラムダ(9ΛHe)の生成を目指す J-PARC E10 Phase-2 実験の実施はかなわなかったが、Phase-2 実験実施のための技術的な改善・準備は完了出来た。
|