研究実績の概要 |
陽子および中性子の密度分布抽出は、安定核では陽子散乱と電子散乱を併用することで可能になりつつあるものの、不安定核では電子散乱が未だ実用化されていないために、これまで不可能であった。本研究はこの状況を打破し、陽子散乱だけから初めて不安定核の陽子分布と中性子分布を独立に抽出し、不安定核物理を飛躍的に発展させる道筋を作ることを当面の目的とする。中間エネルギー陽子弾性散乱をエネルギーの大幅に異なる2点(例えば核子あたり200MeVと300MeV)で精密に測定することにより中性子密度分布だけでなく陽子密度分布まで抽出しようとするものである。その為には電子散乱実験データが存在する原子核で陽子エネルギー200MeVと300MeVで陽子弾性散乱を測定し、陽子弾性散乱実験だけから陽子分布、中性子分布を抽出し、得られた陽子分布を電子散乱から得られたものと比較することが重要である。その為の標的原子核として90,92,94Zrを選び偏極陽子ビームを用いて弾性散乱実験を遂行し測定に成功した。現在データ整理、解析中である。 また炭素12,13,14,16標的の陽子弾性散乱については安定核である12,13,16は300MeVでの測定は終了しておりデータ整理中である。14CについてはPACの了解は得られたものの、標的が放射性物質であるために安全対策、研究所での安全委員会での許可を待っている状態である。Zr アイソトープで陽子分布、中性子分布をどの程度独立に求められるかの結果次第になっているので、Zrの結果を出すべく全力を傾けている。
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