研究課題/領域番号 |
24540307
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山本 和弘 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80303808)
|
キーワード | 放射線検出器 / ダイヤモンド |
研究概要 |
前年度に購入した2個のCVD単結晶ダイヤモンドを検出器として構成した後、J-PARCニュートリノビームラインのミューオンモニター下流に設置し、大強度ミューオンを照射してデータ収集を始めた。信号の強度と波形は以前のサンプルと比べて遜色ない安定したものが得られた。しかし、5月23日に発生したJ-PARCハドロンホールでの放射性物質漏洩事故のため、少量のデータしか得られず、長時間安定性などに関する更なるデータ収集は次年度以降に持ち越しとなった。そのため、当該年度は、それ以前に既にJ-PARCニュートリノビームラインにインストールされ、データ収集が続けられてきた他のダイヤモンド検出器のデータ解析を詳細に行うことにした。その結果、J-PARCメインリングのビームパワーが200kWを超えたあたりから、ダイヤモンド検出器の直前に置かれたイオンチェンバーの出力と比較した信号波高の比率の減少が複数のダイヤモンドサンプルで観測された。さらに、その減少量が時間とともに大きくなるのが観測された。可能性としては、生成する電子・正孔対の急激な増加により、それまでは問題にならなかった微量の不純物に捕獲される電子が増え、内部電場が減少してしまうのではないかということが考えられる。これが、ダイヤモンドの品質に関わる一般的な問題なのかどうかを調べるために、前年度に購入したダイヤモンドサンプルに対しても同様な結果が得られるのかどうか、J-PARCの放射性物質漏洩事故からの復旧後に得られる予定の新たなデータを詳細に解析する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
J-PARCの放射性物質漏洩事故によるビーム供給の停止により、ダイヤモンド検出器へのミューオン照射のデータを十分に得られていない。しかし、それ以前に得られたデータの詳細な解析を進めることはできている。
|
今後の研究の推進方策 |
J-PARCのビーム供給が復旧し次第、ダイヤモンド検出器への大強度ミューオン照射のデータ収集を再開し、イオンチェンバーやカレントトランスフォーマー(CT)などの他のビームモニターとの出力比率の変動を調べる。新たに見出された、ビームパワーの増加に伴う信号波高の減少という問題に対し、ダイヤモンドへのバイアス印加電圧をさらに上げてみて出力を調べるなど、解決策を探る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
学会旅費として使用する予定であったが、学会へ出発する直前に大学内の運営業務に関する急用が入り、学会での宿泊を1日減らさなければならなかったため。 次年度の旅費または物品費として使用する。
|