平成26年度には、これまで開発を行ってきた2相CO2冷却システムの動作条件をさまざまに変えて試験運転を行い、冷却システムのさまざまな特性を明らかにした。-40℃に近い低温運転においてはガスコンプレッサーの能力、ひいてはガスコンプレッサーを駆動するエアコンプレッサーの能力が冷却能力を規定していた。一方、常温付近での運転においては液化CO2の経路に入っているバルブの流量係数の小ささが冷却能力を決めていた。特に低温においてはエアコンプレッサーの圧力不足のため、駆動エアがガスコンプレッサーの駆動に使われずに漏れを生じてしまう現象が見られた。今後、エアコンプレッサーの増強が必須であると思われる。 平成26年度の後半には、それまで一体型であった装置を液化部、流量計部、冷却部の3つの部分からなる装置に変更して、実際の実験での使用に近い状態にするため、液化部と冷却部の距離を20m程度離して運転できるような改造を行った。この改造後の装置の完成検査において、ガスコンプレッサーやいくつかのバルブに使用されているシール材に劣化が見つかり、気密を保持できなくなっていることが分かった。この劣化は高圧のCO2がシール材に分子レベルで侵入し、それが圧力を下げた際にシール材内部で膨張してシール材を内部から破壊するものであると考えられる。現在、このような破壊に強い材質のシール材に交換するための修理を行っている。 3年にわたる研究によって、ガスコンプレッサーを用いた2相CO2冷却システムの原理実証に成功した。実際の高エネルギー物理学の実験に使えるようにするためには、遠隔操作を可能にするなど、改善すべき点はあるが、実用化に向けて明るい見通しを得ることができた。
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