研究課題/領域番号 |
24540314
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大塚 洋一 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50126009)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノコンタクト / 単分子伝導 / 少数電子素子 |
研究概要 |
(1)積層型MBJ法の開発を行った。ポリイミドをコートしたリン青銅板を基板とし、電子線リソグラフィーとリフトオフを繰り返すことで、アルミニウム/酸化アルミニウム/C60+アルミニウムの2層構造を有するMBJ試料を作製した。当初2層間に大きな電気的リークがあったが、2層の重なり部分を最小化するなどの対策で十分な絶縁性をもつ試料を得ることができるようになった。これを用いて液体ヘリウム温度で実験を行い、試料細線の破断と再接合を行えることを確認した。ただし、破断・再接合が可能な繰り返し回数は限られ、突然再接合ができなくなってしまうという現象が起きた。従来の単層MBJ試料では実験上のミスがない限り繰り返し再接合が可能であったことと著しい対照的である。そのような試料をSEMで調べたところ、接合部位で試料が大きく変形しており、2層間の剥離が原因であると考えられる。下層Alをゲート電極として上層ナノコンタクトの電流電圧特性への影響(FET特性)を調べたが、測定できたナノ接合の個数が限られておりまだ明確なゲート電圧効果の確認には至っていない。 (2)ナノコンタクトにおける局所過熱現象を調べるため、スズ薄膜の単層MBJ実験を4K~1Kで行った。既に希釈冷凍温度域での測定に見られていたと同様なIV曲線の構造が超伝導転移以下の温度において観測され、これが過熱による局所相転移であることを再確認した。構造が生じるバイアス電力の温度変化からナノコンタクトにおける熱緩和の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
積層型MBJについては絶縁性を確保した2層試料の作製に成功した。ただし、繰り返し破断に対する寿命が予想に反して短いという問題がある。 局所過熱についてはスズとアルミニウムでの実験を行った。計画に記したインジウムや鉛での実験は行うことができなかったが、次年度には実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)積層型MBJは作製したが、繰り返し破断・再接合に対する耐性が不十分であった。この耐性を上げると共に単分子トランジスタ動作の歩留まりを高めるべく試料構造及び作製方法を再検討する。 (2)真空スプレー法によってAl/AlOx/SMM/Auの4層MBJを作製する。SMM分子の量は単層膜を目安として最適化する。これをMBJステージに取り付け極低温で破断特性、電流電圧特性を調べる。 (3)In及びPbの超伝導ナノコンタクトについてIV特性の測定行い、常伝導への転移が起きる臨界電力を決定し、各系における電子温度の過熱を検討する。 (4)接合近傍の格子温度を知るために、小型温度センサーを接合近傍のMBJ試料表面に取り付け測温するという方法を検討する。 (5)現有装置では100G程度の磁場しか加えることができため、磁場中実験に向けた希釈冷凍機の改造と超伝導電磁石の作製を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
パルスバルブを購入する必要が無くなったために生じた当該助成金については、平成25年度に実施予定の低温実験装置の改造に係る費用(部品作製、超伝導線材購入を含む)に使用する。このほか平成25年度の研究費としてリソグラフィーや真空蒸着などの試料作成のための消耗品の購入、学会発表及び実験補助を担当する大学院学生への謝金を計上する。
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