研究課題/領域番号 |
24540319
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤田 安樹 京都大学, 低温物質科学研究センター, 教授 (90115577)
|
研究分担者 |
江澤 潤一 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (90133925)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 量子ホール効果 / 複合ボソン / ボース凝縮 / 巨視的コヒーレンス / ジョセフソン効果 |
研究概要 |
電子と奇数本の磁束量子からなる複合粒子を想定すると、アハラノフ・ボーム効果によりボソンの交換対称性を持つ。その結果、量子ホール状態自身を複合ボソンのボース凝縮状態と考えることができる。2次元電子系を2枚近接配置した2層系量子ホール状態は、層間のクーロン相互作用により2層の電子が互いに協力しあって新しい量子ホール状態を形成されるので、この量子ホール状態では密度差の揺らぎが許され、位相差の揺らぎが有限となり、巨視的な位相差が観測量となる。この系では、ジョセフソン効果の存在が予想されるので、巨視的量子コヒーレンスの存在を確かなものにする。巨視的量子コヒーレンス性の存在は、量子ホール状態がアハラノフ・ボーム効果によって単独電子のボース凝縮状態であることを意味し、全く異なる新しいボース凝縮系を獲得する意義がある。 我々は複合ボソンモデルを用いて、2層系ν=1量子ホール状態のトンネル電流と面内電流の臨界値を理論計算した。その結果対向流とドラッグ実験により異常な振る舞いが起こることを明らかにし、論文として公表した。実験的にもこの結果を明らかにするため準備を進めている。 またν=2/3では大電流を流すことにより核偏極を起こすことが知られている。この核偏極の緩和を用いて2層系ν=1のスピン状態の密度差依存性を測定した。その結果、励起がスピンから擬スピンに変貌していく過程を測定することに成功した。この結果を公表するために論文を準備している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ACジョセフソン効果を行うための準備は希釈冷凍機のトラブルのため少々遅れている。しかしDCジョセフソン効果の理論的計算は大きく進展した。また核スピン偏極を利用した新たな測定手法を開発した。今後この手法を更に発展させν=1の巨視的量子コヒーレンス性を解明する。初期の計画は遅れているが、別な手法が予想以上に進展しているので研究目的は達成に向かって順調に進んでいると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
ACジョセフソン効果の実験は希釈冷凍機のトラブルのため遅れているが、予定通り進める。従って連携研究者でマイクロ波実験の専門家である福田(兵庫医大)、新井(東北工大)らと協力し、マイクロ波実験を推進する。 また試料作製も強力に推し進める必要があるので、新たに東大物性研の勝本研の協力を得る。
|
次年度の研究費の使用計画 |
変更なし。
|