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2014 年度 実施状況報告書

電気化学的手法を用いたトポロジカル絶縁体・超伝導体の精密物性制御

研究課題

研究課題/領域番号 24540320
研究機関大阪大学

研究代表者

瀬川 耕司  大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (20371297)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードトポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導
研究実績の概要

トポロジカル超伝導体探索のための舞台となるトポロジカル絶縁体の探索については、通常の絶縁体であるPbSe層とトポロジカル絶縁体であるBi2Se3層がそれぞれ結晶構造を保ちつつブロックを形成して積層するPb-Bi-Se系化合物で、これまでに合成の報告のないBi2Se3層が4層積層した未報告相である(PbSe)5(Bi2Se3)3m [以下PSBS]という組成で m=4 となる化合物の単結晶合成に成功し、論文を出版した。この系の光電子分光測定の結果はBi2Se3の層の厚さによって変化し、Bi2Se3薄膜について観測されているのと同様の振舞いを示すことがわかっている。Bi2Se3 層が薄すぎる試料では試料の上面と下面の表面/界面状態が互いに混成してディラック的分散にギャップが開くなど、トポロジカルな由来を持つ特異な性質が弱められることが知られているため、よりBi2Se3の厚い層が得られたことによって表面/界面状態をバルクの物性として観測しやすくなることが期待される。これらの一連の物質は作製すると自然にn型キャリアがドープされており、電気化学的操作によって化学ポテンシャルを動かし、バルク絶縁化を試みたが、残念ながら成功しなかった。
一方で、Bi2Se3層が2層積層した上記と同じ組成で m=2 となる化合物について、電気化学的に銅をインターカレートした試料[以下 CPSBS m=2]で超伝導を示すことを見出し、これも論文に発表することができた。これは組成の似た超伝導体CuxBi2Se3と比べて超伝導転移を示す温度は約2.8 Kと少し低いものの、超伝導遮蔽体積分率が100%に達する試料が得られるなど超伝導特性のより良い系であることがわかっている。また、その低温における比熱の温度依存性からこの系における超伝導が通常のBCS超伝導でない可能性が示唆されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

トポロジカル超伝導体の候補物質である新超伝導体を、トポロジカル絶縁体関連物質に対する電気化学的操作によって実現することができた。これは計画どおりの顕著な成果であるが、この新超伝導体がトポロジカル超伝導体であることの検証にはまだ成功していない。

今後の研究の推進方策

本研究課題は新超伝導体の物性検証のために研究期間を1年延長し、試料の供給の継続を試みる。

次年度使用額が生じた理由

平成26年度までの本研究課題の遂行により、非従来型超伝導を示す興味深い新超伝導体を発見しその成果を発表することができたが、平成26年度にはこの物質の物性測定と論文投稿等に注力したため試料作製に経費がかからず未使用額が発生した。

次年度使用額の使用計画

平成26年度までに発見した新超伝導体について、トポロジカル超伝導体であるかどうかを検証する実験に必要な試料を作製するため、必要な消耗品類を未使用額の予算にて購入する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Pb5Bi24Se41: A new Member of the Homologous Series Forming Topological Insulator Heterostructures2015

    • 著者名/発表者名
      K. Segawa, A.A. Taskin and Y. Ando
    • 雑誌名

      J. Solid Stat. Chem.

      巻: 221 ページ: 196, 201

    • DOI

      10.1016/j.jssc.2014.09.034

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Large linear magnetoresistance in the Dirac semimetal TlBiSSe2015

    • 著者名/発表者名
      M. Novak, S. Sasaki, K. Segawa and Y. Ando
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 91 ページ: 041203-1,5

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.91.041203

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ynthesis and characterization of 3D topological insulators: a case TlBi(S1-xSex)22015

    • 著者名/発表者名
      K. Segawa
    • 雑誌名

      Science and Technology of Advanced Materials

      巻: 16 ページ: 014405-1,8

    • DOI

      10.1088/1468-6996/16/1/014405

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Top gating of epitaxial (Bi1-xSbx)(2)Te-3 topological insulator thin films2014

    • 著者名/発表者名
      F. Yang, A.A. Taskin, S. Sasaki, K. Segawa, Y. Ohno, K. Matsumoto and Y. Ando
    • 雑誌名

      Appl. Phys. Lett.

      巻: 104 ページ: 161614-1,5

    • DOI

      10.1063/1.4873397

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Superconductor derived from a topological insulator heterostructure2014

    • 著者名/発表者名
      S. Sasaki, K. Segawa and Y. Ando
    • 雑誌名

      Phys. Rev. B

      巻: 90 ページ: 220504-1,5

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.90.220504

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] カルコゲナイド系トポロジカル絶縁体の実験研究2015

    • 著者名/発表者名
      瀬川耕司
    • 学会等名
      第62回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      東海大学湘南キャンパス(神奈川県、平塚市)
    • 年月日
      2015-03-11 – 2015-03-14
    • 招待講演
  • [学会発表] Experimental Research on Topological Insulators2014

    • 著者名/発表者名
      K. Segawa
    • 学会等名
      International conference on topological quantum phenomena
    • 発表場所
      京都大学(京都府、京都市)
    • 年月日
      2014-12-16 – 2014-12-20
    • 招待講演
  • [学会発表] トポロジカル絶縁体ベースの新超伝導体Cux(PbSe)5(Bi2Se3)3mの単結晶作製2014

    • 著者名/発表者名
      瀬川耕司,鳥羽俊伸,佐々木聡,安藤陽一
    • 学会等名
      日本物理学会2014年秋季大会
    • 発表場所
      中部大学(愛知県、春日井市)
    • 年月日
      2014-09-07 – 2014-09-10

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公開日: 2016-05-27  

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