研究課題
トポロジカル超伝導体探索のための舞台となるトポロジカル絶縁体の探索については、通常の絶縁体であるPbSe層とトポロジカル絶縁体であるBi2Se3層がそれぞれ結晶構造を保ちつつブロックを形成して積層するPb-Bi-Se系化合物で、これまでに合成の報告のないBi2Se3層が4層積層した未報告相である(PbSe)5(Bi2Se3)3m [以下PSBS]という組成で m=4 となる化合物の単結晶合成に成功した。この系の光電子分光測定の結果はBi2Se3の層の厚さによって変化し、Bi2Se3薄膜について観測されているのと同様の振舞いを示すことがわかっている。Bi2Se3層が2層積層した上記と同じ組成で m=2 となる化合物について、電気化学的に銅をインターカレートした試料[以下 CPSBS m=2]で超伝導を示すことを見出した。これは組成の似た超伝導体CuxBi2Se3と比べて超伝導転移を示す温度は約2.8 Kと少し低いものの、超伝導遮蔽体積分率が100%に達する試料が得られるなど超伝導特性のより良い系であることがわかっている。また、その低温における比熱の温度依存性からこの系における超伝導が通常のBCS超伝導でない可能性が示唆されている。しかし、大阪大学産業科学研究所の安藤陽一教授が平成27年度にドイツのケルン大学に移籍し、それにともなって代表者も京都産業大学に異動した。このことにより、この超伝導体の作製が停止してしまい、今後の見通しが不透明になったため、それを継続するために当研究課題の終了年度を1年延長した。まだ試料の供給態勢は整っていないが、当研究課題の経費により、試料の作製設備は整いつつある状況である。
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Phys. Rev. B
巻: 92 ページ: -
10.1103/PhysRevB.92.100508