研究概要 |
ペロブスカイト構造をもつチタン酸化物について、研究代表者はチタン酸バリウムの誘電特性と局所構造の関係を、放射光X線を用いた発光分光法により調べてきた。チタン酸バリウムは自発分極をもつ強誘電体の典型物質である。これまでに、温度変化や外部電場に対する変化を、発光スペクトルに現れる微小な形状変化として捉えることに成功している。 この手法を強誘電体だけではなく、自発分極を持たない誘電体にも適用し、外場(温度・電場・紫外線照射)に対して局所的な分極(電気双極子)の応答を、発光スペクトルの変化として捉えることが本研究の狙いである。強誘電体の典型物質であるチタン酸バリウムと、同じ結晶構造をもつ常誘電体の典型物質であるチタン酸ストロンチウムの二つ試料を詳細に調べることで、本研究の最終目的であるAサイト置換型ペロブスカイト結晶のもつ誘電特性をX線発光分光測定から明らかにできると考えている。 助成一年目の研究実績としては、大きく分けて2つの成果報告が挙げられる。一つ目は、これまで研究会などでたびたび報告してきたチタン酸バリウムナノ粒子のX線発光分光測定の結果を共同研究者とともに理論的な電子状態に関する考察を深めたことにある。局所的な誘電分極が変化することと、スペクトルの2つの特徴的なピーク構造の変化を初めて理論的に解明した。(Physical Review B, vol.86 (2012) 224114, 査読有)。 もう一つは、極低温の量子常誘電相にあるチタン酸ストロンチウムに紫外線照射で誘起される局所分極の存在を初めて明らかにしたことである。(Journal of the Physical Society of Japan, vol. 82 (2013) 053701, 査読有) 2年目は、この多重条件下でさらに電場印加してX線分光実験を行う。そのための準備にも早めに取り掛かっている。
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