研究実績の概要 |
ペロブスカイト構造をもつチタン酸化物は、セラミックコンデンサーや圧電素子などに使われている基幹物質である。デバイスの微細加工が進むにつれて、従来までのバルク材料とは異なり、薄膜界面やナノ粒子などではさまざまな特性が見つかっている。この特性の微視的起源を電子論的に解明することが、実用材料としてのブレークスルーに必要な課題となっている。 研究代表者は、ペロブスカイト型チタン酸化物の誘電特性の発現機構について、局所構造に敏感なX線発光分光法により調べてきた。これまでに、チタン酸バリウムを用いて、温度変化や外部電場に対する変化を発光スペクトルに現れる微小な変化として捉えることに成功し、発光スペクトルから局所構造や局所分極を直接に議論することを可能にしてきた。本年度は、研究の最終年度にあたり、これまでの取り組みを包括する測定と議論を行った。常誘電体のチタン酸ストロンチウムには、低温相において局所分極が生じること、それが紫外線や外部電場によって秩序化する可能性を指摘されてきた。その結果、我々が期待したとおり、紫外線の照射によってユニットセル内に電気双極子モーメントが誘起されること、それが外部電場によって強誘電秩序をもつことを明確にすることができた(Phys. Rev. BおよびJpn. J. Appl. Physに投稿中)。 さらに、発展的な取り組みとして、チタン酸ストロンチウムに一軸応力を加えた場合の電子状態変化についてもX線吸収分光法による実験的考察を行った。従来、この条件下では強誘電性を示すことが二次高調波発生の実験結果から推察されていたが、ユニットセル内に電気双極子モーメントは生じている無いことが明らかになった(J. Kor. Phys. Soc., in press.)。
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