研究課題/領域番号 |
24540328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / 第一原理計算 / 密度汎関数法 / エムベッディッドGreen関数法 |
研究概要 |
本研究の目的はトポロジカル絶縁体の電子構造を理論計算により明らかにすることである。その際、トポロジカル絶縁体を特徴づける表面局在金属状態を正確に記述するために、表面系の電子構造計算では一般的なスラブ近似を用いずに、エムベッディッドGreen関数法を用いて半無限結晶の電子構造を第一原理から計算する。トポロジカル絶縁体は、強いスピン軌道相互作用により、バルクエネルギーバンドの順序が反転することにより生じる。平成24年度は、研究実施計画に記述したように、フルポテンシャル線形化補強平面波法とエムベッディッドGreen関数法に基づく研究代表者の半無限表面の電子構造計算プログラムに、スピン軌道相互作用項を取り入れる作業を行った。エムベッディッドGreen関数法の計算は、(1)バルク結晶の電子構造を計算する、(2) 得られたバルクポテンシャルを用いて表面結晶方位に対応する複素エネルギーバンドを計算し、これからエムベッディングポテンシャルを求める、(3) 表面領域の薄膜ハミルトニアンにエムベッディングポテンシャル項を加えて半無限表面系の電子構造を計算する、以上の3つの独立なステップから成る。このすべての計算プログラムにスピン軌道相互作用項を取り入れる作業をほぼ完了した。(1)に関しては、代表的なトポロジカル絶縁体であるBi2Se3のエネルギーバンド構造をスピン軌道相互作用を取り入れて計算し、文献上の他の計算と完全に一致する結果を得た。また(2)に関しては、AuやPtなどのバルク金属に対して、スピン軌道相互作用項を取り入れた複素エネルギーバンド構造を計算し、ブロッホ状態とエバネッセント波が正しく再現できることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画に基づき、フルポテンシャル線形化補強平面波法とエムベッディッドGreen関数法に基づく研究代表者の半無限表面の電子構造計算プログラムに、スピン軌道相互作用項を取り入れる作業をほぼ完遂し、計算プログラムが正しく機能することを確かめたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度からトポロジカル絶縁体の半無限表面の電子構造計算を開始する。計算はBi2Se3、Bi2Te3、Sb2Te3など第2世代のトポロジカル絶縁体から始める。まずこれらの物質の複素エネルギーバンドを計算して、トポロジカル絶縁体を特徴づけるスピン分極した表面ディラック状態の起源を複素エネルギーバンドの視点から論じる。次にこれらの物質の半無限結晶の電子構造を計算する。この際、表面付近の原子構造の緩和を考慮する必要がある。またトポロジカル絶縁体の表面には必ず金属状態が出現するので、表面状態のフェルミエネルギーを決定する必要がある。これらすべてをエムベッディッドGreen関数法で計算するのは容易ではない。そこでVASPなどの3次元結晶の計算プログラムとスラブ近似を用いて、表面原子構造を最適化し表面局在状態のフェルミエネルギーの位置を決めておく。この計算結果をエムベッディッドGreen関数法による半無限結晶の電子構造計算の入力データとして用いて、表面局在状態と共鳴状態の区別など、スラブ近似では得られないトポロジカル絶縁体の詳細な電子構造を議論する。また密度汎関数法では記述できない強電子相関効果を取り入れた計算についても検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年夏期にユーリッヒ研究センターに出張して、海外研究協力者のWortmann博士、Liebsch博士と、本研究テーマに関する議論、打合せを行いたい。そのための旅費を申請する。また物品費、その他の費用は、FORTRANコンパイラー等ソフトウェアの購入及びメインテナンス費に当てる。
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