研究実績の概要 |
密度汎関数法の範囲の第一原理計算、および動的平均場理論を用いた多体計算により、2および3次元トポロジカル絶縁体の電子・スピン物性を研究した。 第一原理計算に関しては、エムベッディッドGreen関数法の計算プログラムにスピン軌道(SO)相互作用を組み入れ半無限表面を計算した。これにより、表面局在状態とバルクバンドの連続準位を明確に区別することができた。例として、Bi(111)、Sb(111)の電子構造を計算して、前者はトポロジカルに自明、後者は非自明な直接ギャップ絶縁体であることを、表面バンドのエネルギー分散関係から示した。またBi、Sb(111)の表面バンドのΓ点のスピン分裂が、p_{x,y}とp_z軌道成分の間のSO行列要素から生じることを示した。関連して、Au、Ag、Cu(111)のL-gap表面バンドの場合は、Γ点付近のスピン分裂が、d_{z2}とd_{xz, yz}軌道成分の間のSO行列要素から生じることを示し、CuがAgより大きなスピン分裂を示す機構を解明した。Bi2Se3表面の電子構造を計算して、表面バンドのエネルギー分散関係を、エムベッディングポテンシャルの零点・極と関連付けて議論した。 電子相関がトポロジカル絶縁体に及ぼす影響を調べるため、2次元トポロジカルバンド絶縁体と、トポロジカルには自明なMott絶縁体の界面における電子構造を、Hubbard型のクーロン反発力を取り入れたBernevig-Hughes-Zhang2バンドハミルトニアンと動的平均場理論を用いて調べた。2つの絶縁体相は、同一のSO相互作用を持つが、クーロン反発エネルギーの違いにより相転移を起こす。界面における近接効果により、Mott絶縁体側の界面原子層がトポロジカル絶縁体に相転移して、その結果、トポロジカル絶縁体を特徴づける局在エッジ状態が、Mott絶縁体内部へ侵入することが分った。
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