研究課題/領域番号 |
24540335
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
筒井 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (80291011)
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キーワード | 共鳴非弾性X線散乱 / 強相関電子系 |
研究概要 |
L吸収端共鳴非弾性X線散乱は,銅の内殻2p軌道と3d軌道との間の遷移を伴ってX線の吸収及び放出が生じるものであり,dd励起や磁気励起等が散乱スペクトルとして観測される.今年度において,内殻2pホールによるクーロンポテンシャルを取り入れた中間状態を取り扱う計算手法を構築した.この計算手法を単一バンド・ハバード模型に適用して,入射X線エネルギー依存性やクーロンポテンシャルの強度依存性等を明らかにした. 銅酸化物高温超伝導物質におけるニッケル不純物の置換効果に対して,その電子状態の理論的な考察及びX線散乱スペクトルの理論を発展させた.すなわち,ニッケル置換された系に注入されたホールはニッケルサイトに局在し,さらにホールを注入した場合,そのニッケルサイトとホールとの相互作用は引力的であることを明らかにした.そして,これら電子状態に関係した特徴的なホール濃度依存性が散乱スペクトルに表れることを予見した. 反強磁性クロム金属に対して,多軌道ハバード模型に対するRPA近似及びX線散乱プロセスに関する高速衝突近似に基づいた計算によりL吸収端共鳴非弾性X線散乱スペクトルを理論的に求め,今後の実験に対する指針を提示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L吸収端共鳴非弾性X線散乱のプロセスに対する計算が数値的に可能になり,計算のための理論構築が順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた散乱プロセスの数値的な計算手法を,より現実に即した模型に適用していく.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の予算と合わせることによって次年度も計算クラスタの増強を行うことにより,全期間中の計算遂行の効率が上がることが判明したため,次年度予算額が生じた. 計算クラスタの増強を行い,より現実に即した模型に対する大規模数値計算を遂行し,本研究課題に対する研究の総括を行う予定である.
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