研究課題
本年度は,総括に必要となる補足実験を主に実施した。非調和フォノン起源の量子臨界現象を示す(Ca,Sr)3(Rh,Ir)4Sn13について、今年度はRh系を対象とし、置換による構造相転移の変化を微視的に調べた。結果、Ca置換で臨界点に向けて構造相転移が抑制されることに伴い、秩序波数が変化することに加え、秩序変数の発達に対応する臨界指数が顕著に変化することも発見した。昨年度までの結果と合わせ、A3T4Sn13における非調和振動起源の量子臨界性について、微視的視点から転移・揺らぎの性質及びその系統的な変化を捉えることに成功した。β-パイロクロアKOs2O6が示す超伝導相内の未知の一次転移に着目し、Kイオンの非調和熱振動の変化や基底状態の結晶構造を調べた。Kイオンの非調和熱振動の可視化に成功し、その結果一次転移前後で振動に顕著な違いは見られず、超格子反射の出現も確認されなかった。本研究課題を通じ、β-パイロクロア超伝導体の内、異なる非調和性をもつKOs2O6、CsOs2O6について、異方性を含む振動の詳細を明らかにすることに成功し、微視的な理解に重要な情報が得られた。重い電子系YbCo2Zn20では,磁場誘起臨界点の先に現れる未知の秩序相の起源を決定することを目指した。磁場誘起磁気ピークの観測に成功し、強度の波数依存性から反強四極子秩序が実現していることを決定した。さらにこの秩序相が特異な磁気散漫散乱を伴う新奇な競合状態にあることを発見した。圧力下で反強磁性が誘起されることと比較し、この物質の臨界点近傍ではスピンー軌道が複雑に絡んだ新奇の秩序状態にあることを見出した。以上、本課題では、A3T4Sn13,β-パイロクロア,YbCo2Zn20など篭構造をもつ物質について、量子ビームの相補利用を通じ、非調和振動を主因として現れる多彩な物性を微視的な視点から解明することに成功した。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
J. Appl. Crystallogr.
巻: 49 ページ: 120 - 127
10.1107/S1600576715022943
JPS Conf. Proc.
巻: 8 ページ: 036018 1-6
10.7566/JPSCP.8.036018
固体物理
巻: 50 ページ: 821 - 832