研究課題
基盤研究(C)
キャリア注入誘起のキュリー温度増加など興味深い磁性を有する強磁性半導体であるEuO薄膜における時間分解磁気光学効果について4f状態から5d状態への光学的遷移に対応する光エネルギーを選び実験的研究を挙行した。具体的には、光子エネルギー1.9 eVである。EuO薄膜試料表面に対して垂直な方向に磁場を印加した条件下で磁化のフェムト秒レーザー照射による過渡的な光誘起変化を時間分解偏光回転分光法(ファラデー回転分光法)により評価し、光生成キャリアの媒介効果に伴う交換相互作用の強化による磁化の増大の観測に成功した。実験手法は、フェムト秒チタン・サファイア・レーザー再生増幅器をポンプ源とする波長可変パラメトリック増幅器(OPA)を光源とした分光測定系に基づく。この結果は、強磁性・常磁性転移温度であるキュリー温度付近でのみ支配的だと信じられてきた交換相互作用が超高速時間領域では低温域(例:10 K)でも磁化を増大しうることを示唆するものである。また、円偏光照射による磁化の歳差運動に関する制御にも成功し、左回り円偏光照射時には歳差運動が消失し、逆に右回り円偏光にすると増強するような臨界的な磁場が存在することが分かった。光の角運動量によるフェムト秒時間スケールでの非熱的な歳差運動制御は光誘起磁化増大効果と円偏光方向に対する奇の依存性を持つ逆ファラデー効果との組み合わせにより実現されるという実用上も有益な知見を得た。
2: おおむね順調に進展している
実験およびその懐石は着実に計画通りにこなすことができており、また、研究成果を原著論文として世に問うことができているため。
所属機関の変更異動があるためそれに伴う装置移設などに時間をとられる予定であるが、出来る限り平成25年度の研究計画にある内容に沿って研究を推進する予定である。
次年度使用額が発生しているのは研究が順調に進んでいるためであり、平成25年度の研究計画に記載のある実験装置(増幅器)とその拡張機能オプションなどと併せた購入に充当する予定とする。
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