研究課題/領域番号 |
24540337
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
牧野 哲征 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70311363)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 励起子 / 強磁性半導体 / スピントロニクス |
研究実績の概要 |
EuO薄膜を作製しその光磁気特性を調べた。EuO薄膜にはキャリアを注入することにより強磁性常磁性転移温度が増加するなど面白い物性を有する。転移温度が光の照射によって増加しないかどうかという仮説を以って実験的研究を行った。EuO薄膜試料表面に対し鉛直に磁場を印加しながらフェムト秒レーザー照射による過渡的な光誘起の磁化変化をモニターした。温度変化などの種々のデータを慎重に解析した所、光照射によって生成されるキャリアが媒介効果に伴って交換相互作用を増幅した結果としての磁化の増大であると結論づけられた。ここではフェムト秒チタンサファイアレーザーを励起光とする波長可変パラメトリック発振器(OPA)を光源とした時間分解ファラデー回転分光法に基づいた実験法を援用した。また、EuO薄膜において円偏光したレーザー光を照射することにより磁化の歳差運動を誘発できるだけでなく偏光の回転方向(ヘリシティー)を変えることにより100フェムト秒オーダースケールで歳差運動を止めたり増幅したりすることを見出した。光が持ついわば角運動量のような物理量がフェムト秒の時間スケールで非熱的な歳差運動を誘発しうるということは、光誘起磁化増大効果と逆ファラデー効果との組み合わせが光照射されたEuO薄膜において起こっているということで説明される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験及びその関連データーの解析は着実に計画通りにこなすことができた。また、研究成果を原著論文という形で世に問うことができている。しかも、成果が物性物理コミュニティーに与える影響は大きく、招待講演をある程度の回数行うなど一定の成果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な実験に必要となる道具が1ケ入手困難だったため延長申請を行った。今年度においてはその道具を購入したうえで、計画の中で未実行の実験的研究を遂行し本研究を通じて得た結論を強化できるようなデータを取得する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中に納品予定であった試薬に納期遅れが発生し、今年度中の納品が難しくなった。そのため計画を変更し、平成27年度中にその試薬を用いた実験を行うこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は試薬の購入にあてることとし、入手後速やかに予定していた実験を実施し、計画の実践に必要なデータを取得する。
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