電子ドーピングキャリア注入による臨界温度上昇など意外性のある物性を示すことで知られている強磁性半導体を研究対象とした。具体的にはEuO薄膜の時間分解磁気光学効果について探求した。励起エネルギーは約2 eVで4fから5dへの遷移に対応する。フェムト秒レーザー分光法(時間分解ファラデー分光法)を用いて光誘起による磁化変化を直接時間追跡した。フェムト秒チタンサファイアレーザー再生増幅器をポンプ源とする波長可変パラメトリック発振器によって磁化が増大することがわかり、その現象は臨界温度よりもずっと高温である約200 Kまで観測された。くわえて、EuOの磁化の歳差運動をall opticalに観測することにも成功し、反時計向きと時計向きで円偏光照射効果(円偏光二色性)が異なるということも見出した。フェムト秒時間スケールでの断熱的な歳差運動の制御に対し光の持つ「角運動量」の果たす役割について解明することができた。光誘起磁気増大効果と逆ファラデー効果が相補的に観測された現象に寄与していることが分かった。光制御型磁気メモリーとして実用化することに関する考察を加えた。
最終年度においては計測されたデータの信号雑音比についてさらなる改善のため次のような予備的な研究を行った。特徴的なスペクトル波形が得られることがわかっている強磁性半導体を測定対象として変調分光実験を進めた.本研究期間中に動作するようになったVNDFについて,更なる改良を施し,本研究で意図した通り偽作信号に起因したバックグラウンドが平坦になることや真の信号が精度よく観測できることが確認されれば,様々な測定対象となっている磁気材料における光学応答や磁界分布などを求めていく予定である
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