研究課題/領域番号 |
24540338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古崎 昭 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 主任研究員 (10238678)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / アメリカ合衆国 / スイス |
研究概要 |
1.3次元の時間反転対称な弱いトポロジカル絶縁体の2次元表面のディラック電子のアンダーソン局在問題を解明するため、2次元ネットワーク模型を構築し、転送行列法による数値シミュレーションを行った。3次元弱トポロジカル絶縁体を2次元トポロジカル絶縁体を層状に重ねたものと見なすと、このネットワーク模型は各層のヘリカル端状態を(スピン反転過程を含む一般的な)時間反転対称なトンネル行列で結合させたものとなっており、層に平行方向と垂直方向の伝導性が大きく異なった異方的ネットワーク模型である。準1次元系の局在長の有限サイズスケーリングによる解析から、層間トンネルの強さが一様な場合にはアンダーソン局在が起こらないことを確認した。一方、層間トンネルの強さを交替させると、金属絶縁体転移が起こることを確認した。この転移点での局在長の発散の臨界指数がシンプレクティック・クラスに対して知られている値(約2.7)と一致するかどうか現在調べている。 2.対称性によって守られたトポロジカル相の代表例に、整数スピン反強磁性量子スピン鎖のハルデン相がある。最近接交換相互作用が強磁性的で、次近接交換相互作用が反強磁性的なスピン1/2の量子スピン鎖模型において、基底状態で自発的にスピンのダイマー化が起こることにより、実効的にスピン1反強磁性量子スピン鎖と同様な状況になって、ハルデン相が生じることを明らかにした。 3.ディラック・ハミルトニアンを例にとり、通常の時間反転対称性や粒子正孔対称性の有無に加えて、反転対称性をもつ場合のトポロジカル絶縁体・トポロジカル超伝導体の分類理論の構築に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元の弱いトポロジカル絶縁体の2次元表面のアンダーソン局在問題に対しては、ネットワーク模型の数値計算がほぼ収束しつつあり、パラメータ空間での相図に対する理解についても進展が見られた。もう少し詳細をつめれば、研究成果を論文にまとめることができる。また、反転対称性をさらに課した場合のトポロジカル絶縁体・超伝導体の分類理論についても大きな進展がえられたので、論文をまとめつつある状況である。
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今後の研究の推進方策 |
3次元の弱いトポロジカル絶縁体の2次元表面のアンダーソン局在問題について、ネットワーク模型に基づく理論解析を早期にとりまとめ、論文発表を行う。反転対称性のあるトポロジカル絶縁体・超伝導体の分類理論の応用例や変形について考察する。また、相互作用している多粒子系の(対称性に守られた)トポロジカル相について、2次元でのチャーン・サイモンズ理論に基づく有効場理論や、1次元での行列積状態に基づいた分類理論を再検討し、3次元への拡張や具体的なミクロな模型の構成を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
イリノイ大学の笠真生助教授やポールシェラー研究所(スイス)のムドリー博士との共同研究を継続するため、外国出張や招聘を行う。研究成果の発表や研究情報収集のために、外国出張および国内出張を行う。研究遂行に有効な参考文献を適宜購入する。平成24年度未使用額は、主に招聘謝金を平成24年度に支出する必要がなかったためである。
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