研究課題/領域番号 |
24540338
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
古崎 昭 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 主任研究員 (10238678)
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / クリフォード代数 / アンダーソン局在 |
研究概要 |
1.結晶が鏡映対称性をもつ絶縁体や超伝導体に対するトポロジカル相の一般的な分類理論をクリフォード代数の拡大問題として定式化し、各空間次元と対称性クラスに対する分類表を完成させた。さらに、表面ディラック電子状態の安定性を議論した。 2.Z2トポロジカル絶縁体(超伝導体)を積層させて実現される弱いZ2トポロジカル絶縁体(超伝導体)の表面には、一般に2個(あるいは偶数個)のディラック・コーンが存在する。これらのディラック状態は、積層間のカップリングに強弱をつけることで時間反転対称性を保ったままギャップを開くことができる。このギャップが開いた状態はZ2トポロジカル数で区別され、乱れがある場合でも積層間カップリングが(平均として)一様な状態は必ずディラック状態は非局在となることを、クリフォード代数の方法を用いて示した。 3.3次元の弱いZ2トポロジカル絶縁体の表面状態のアンダーソン局在問題を調べるため、異方的な2次元ネットワーク模型を構築し、その相図を転送行列の方法を用いて数値的に決定した。層間のトンネル結合がほぼ一様のときは金属相であり、結合の強弱が十分大きいときに絶縁相となる。金属・絶縁体転移点での局在長の発散の臨界指数を数値的に決定した。 4.1次元の相互作用する電子系の低エネルギー有効理論について考察し、低エネルギー励起の分散が線形でないときには、フェルミオンがよい準粒子励起となり、その寿命が励起エネルギーの8乗に反比例することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
弱いZ2トポロジカル絶縁体の表面状態の乱れに対する安定性(アンダーソン局在)の問題については、クリフォード代数を用いた解析的なアプローチとネットワーク模型の数値シミュレーションの両方によって、最終的な結論を得ることができた。また、クリフォード代数を用いた分類理論を、ワイル反金属やディラック反金属におけるワイル点・ディラック点の安定性の解析や、1次元や2次元でのディラック電子のアンダーソン局在の問題に応用することができた。
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今後の研究の推進方策 |
電子間相互作用が強いときのトポロジカル相の研究として、1次元のハルデン・スピン鎖を一般化した模型(例えばSU(3)スピン模型)を構築し、その性質を解析する。また、ディラック電子のアンダーソン局在の問題に関して、クリフォード代数を用いた解析的な理論からの予想を、ネットワーク模型を用いて数値的に検証することを試みる。また、トポロジカル絶縁体表面のデイラック電子の磁場中の振る舞いについて、最近の整数量子ホール効果の実験結果を念頭に、解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたアメリカ物理学会での成果発表は共同研究者が行ったので、米国出張旅費を支出する必要がなくなったことが主な理由である。 最新の研究情報を収集するため及び本研究課題の研究成果を発表するため、海外での国際ワークショップに参加する外国出張を複数回行う予定である。
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