研究課題/領域番号 |
24540339
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中西 毅 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (00301771)
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研究分担者 |
安藤 恒也 東京工業大学, 理工学研究科, 特命教授 (90011725)
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キーワード | グラフェン / 有効質量理論 / 電気伝導 |
研究概要 |
この研究では層欠陥、周期構造などナノ構造があるグラフェンの電気伝導、電子状態などを理論的に研究し、トポロジカルに特異な2次元系でのメゾスコピック現象を解明し予言することを目的とする。 今年度は昨年度に引き続き、表面に層欠陥を含む多層グラフェンにおいて電気伝導を有効質量近似の方法で調べた。電気伝導の谷状態に依存する異方性すなわち谷分極伝導は層欠陥のジグザグ型、肘掛椅子型といった原子構造に大きく依存することを見いだした。さらに非対称性は層数とともに減少することを示した。これら予備的な結果の一部をプロシーディングス論文として発表した。 扁平したカーボンナノチューブについてはグラフェン・ナノ構造の一例として調べている。これは層間相互作用があり2層グラフェンとみなせる中央部分と、単層グラフェンとみなせる端部分から構成される。実験的には太い単層ナノチューブの単離と、それに由来する扁平したカーボンナノチューブが報告されている。グラフェン・リボンに比べ、端構造に揺らぎの少ない新たな量子細線として注目される。そこで、有効質量近似を用いた2つの方法により、その電子状態を調べた。最初の方法ではカーボンナノチューブから出発し面間の相関相互作用を含めたモデルにより電子状態のカイラリティ依存性を明らかにした。すなわち、カイラルナノチューブが扁平した場合、上下層の原子配置は非整合になり、一般に面間の相互作用は極めて弱い。他方2層グラフェンの境界条件として解く方法により、非カイラルな場合の電子状態を理解した。このときAA, ABといった2層グラフェンの構造も含め上下層の原子配置は整合するが、電子状態は重なり方に大きく依存して金属的または半導体的になることを示すと共にその理由を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、グラフェン・ナノ構造の電気伝導、電子状態を理論的に研究し、トポロジカルに特異な2次元系でのメゾスコピック現象の理論的な解明、予言を計画した。グラフェン・ナノ構造として、表面に層欠陥を含む多層グラフェンおよび扁平したカーボンナノチューブを取り上げ、その電気伝導、電子状態を調べおおむね当初計画通り研究が進んでいる。 ただし研究代表者において平成24年度後半から平成25年度前半にかけ所内での拘束時間が多い研究管理業務が予想外に急増したため、計画した研究が予定通り進まなかった。しかし平成25年度後半には状況が改善し、当初計画に近付きつつある。平成26年度においてさらに加速し当初計画した研究を達成する見込みである。 一方、研究分担者、連携研究者においては有効質量理論に基づく議論および第一原理シミュレーションによる研究、成果発表が当初計画通り進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通りグラフェン・ナノ構造に関する電気伝導、電子状態の理論的研究を進める。表面に層欠陥を含む多層グラフェンおよび扁平したカーボンナノチューブに関する平成25年度中の研究を継続し、得られた結果について議論を深め、トポロジカルに特異な2次元系でのメゾスコピック現象を理論的に解明すると共に、成果の発表に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末に海外旅費への支出を予定していたが、渡航目的が直前で変更になり科研費の研究内容と異なる目的になったため、別予算で支出するのが適当と判断した。 国際会議で研究成果発表のため海外旅費への支出を計画している。年度末に発注したノートパソコンなどは基金の制度を利用し年度跨ぎで納品されたため、会計処理上次年度使用額に含まれる。
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