研究課題/領域番号 |
24540339
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中西 毅 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 研究グループ長 (00301771)
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研究分担者 |
安藤 恒也 東京工業大学, 理工学研究科, 特命教授 (90011725)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グラフェン / 有効質量理論 / 電子状態 |
研究実績の概要 |
この研究では層欠陥、周期構造などナノ構造があるグラフェンの電気伝導、電子状態などを理論的に研究し、トポロジカルに特異な2次元系でのメゾスコピック現象を解明し予言することを目的とする。 今年度は、グラフェン・ナノ構造の一例として扁平したカーボンナノチューブを調べた。扁平したカーボンナノチューブは層間相互作用があり2層グラフェンとみなせる中央部分と、単層グラフェンとみなせる端部分から構成される。有効質量近似の方法により、電子状態のカイラル角依存性を解明した。カイラルナノチューブが扁平したとき、炭素原子間距離が大きいため、面間の相互作用は小さい。その結果、半導体的ナノチューブが扁平したときはエネルギーギャップが残る。一方、肘掛椅子型、ジグザグ型のナノチューブでは、面間の相互作用が大きく、重なりの構造によってエネルギーバンドが大きく変化する。面間の相互作用の有効ポテンシャルは、谷間成分がジグザグ型のナノチューブで非常に大きくカイラル角と共にすぐに減衰する。一方谷内成分は肘掛椅子型付近で大きく比較的ゆっくり減衰することを示した。これらの結果をまとめ、論文、口頭により発表した。 さらに、第一原理シミュレーションでは光学励起による層間距離の変調を示した。本研究では原子核周りの電子雲の振動を誘起し層状構造の解離を引き起こすため、フォノン励起を用いた。極性を持つ層状材料(ヘキサゴナル窒化ホウ素)に光学フォノンを誘起することで、各層に動的双極子を発生し、層間引力増強にいたる可能性を見出した。この研究は2次元新物質における層状距離制御の新たな方法として赤外レーザー照射を提唱し、実験的研究の新たなテーマを提供するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、グラフェン・ナノ構造の電気伝導、電子状態を理論的に研究し、トポロジカルに特異な2次元系でのメゾスコピック現象の理論的な解明、予言を計画した。グラフェン・ナノ構造として、表面に層欠陥を含む多層グラフェンおよび扁平したカーボンナノチューブを取り上げ、その電子状態を調べおおむね当初計画通り研究が進んでいる。これらの成果は論文、口頭により発表している。 また、第一原理シミュレーションでは加工されたグラフェンデバイスの評価手段として近年注目されているHeイオン顕微鏡および、光学励起による層状材料の層間解離に関するシミュレーションを行い、その成果を論文および口頭で発表すると共に特許も出願した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度末に得られた本研究に密接に関連する結果について、研究成果をまとめて国際会議などにおいて発表する。特に扁平したナノチューブを閉じた端を持つ2層グラフェンと見なし境界条件を用いた方法による解析結果から、ジグザグ型及び肘掛け椅子型のバンド構造変化を理解したので、それに関する成果発信を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、研究成果をまとめ国際会議において発表する予定であったが、別の観点からの解析が必要となり、それを遂行した。計画を変更し次年度における国際会議で発表することとしたため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
このため、プロジェクト成果の発表を次年度開催される国際学会で行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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