研究課題
光スウィッチング磁性体Cu2[Mo(CN)8]の光誘起磁性、光誘起消磁の機構を、大規模数値計算を通して微視的に解明、これに基づき、さらなる物質設計に対する提言も行った。系列物質にMoをW、CuをFeに置換したものがあるが、これについても、定性的、半定量的議論を行い、両者比較の中で、Mo-Cuの組み合わせが、最も大きな磁化の発現につながることを示した。Mo(IV)の有効4d軌道、Cu(II)の有効3d軌道から成る拡張Hubbard模型に基づき、時間異存Hartree-Fock法により数値経路積分をすることで、磁化ダイナミクスを計算した。光照射は、ベクトル・ポテンシャルを用いて、遍歴項にいわゆるPeierls因子を導入することにより表現した。磁化緩和駆動因子として、Dzyaloshinsky-守谷(DM)相互作用を導入したが、これについては、結晶構造に基づき可能なベクトルを精査し、その依存性についても調べた。結果、DM相互作用の大きさは確かに磁化ダイナミクスに影響を与えるが、最終的に発現する最大磁化は、その詳細に依らないと結論できた。パルス照射、連続光照射、照射強度、波長など、実験環境を忠実に再現し、観測されている磁化ダイナミクスを定量的に再現することに成功した。光誘起強磁性状態、また光により再消磁した常磁性状態、これらの微視的電子状態についても調べた。驚くことに、再消磁状態は、光照射前の静的常磁性状態とは定性的に異なる、Moの4d電子のある種励起状態に相当することが、明らかとなった。核磁気共鳴や角度分解光電子分光の技術を駆使して、このような電子ダイナミクスを可視化できないか、現在実験グループと検討を進めている。
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Physica B
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