研究課題/領域番号 |
24540343
|
研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
平島 大 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20208820)
|
キーワード | 電子相関 / スピン波 / 保存型近似 / ハーフメタル強磁性 |
研究概要 |
代表的な遍歴強磁性体である鉄について、電子相関効果を取り入れて、常磁性体状態、強磁性体状態を統一的に記述する摂動論的枠組み(自己無撞着2次摂動理論)を構築した。それによってキュリー温度などの熱力学量以外にもフェルミ面近傍の準粒子有効質量、スピン波励起などの動的物理量に対する電子相関効果を定量的に評価した。その結果、定量的にかなり満足のいく結果が得られたものの有効質量増大については必ずしも実験とのよい一致が得られなかった。現行の理論を拡張しスピン波励起の影響も繰り込む理論形式を用いる必要があると思われる。また、常磁性状態から強磁性状態への転移をよりよく記述する理論形式の開発も行い、鉄およびニッケルに適用した。 電子ドープ型銅酸化物高温超伝導体に関してはスピン揺らぎの効果を取り込んだ理論によって、フェルミ流体に基礎を置く考え方によって実験結果を説明できることを明らかにした。また、より単純な強相関系である2次元ヘリウム3を研究対象として、相関効果を扱う方法を適用し、その正当性について詳しく検証するとともに、励起スペクトルに現れる相関効果を明らかにし、実験結果との比較を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度に所属機関を異動したため、若干研究の立ち上げに遅れが生じたが、25年度には計算機の購入も行い本格的に研究体制を整え、24年度の遅れを取り戻すことができた。結晶の表面状態に関する知見、ハーフメタル強磁性モデルのモデル構築など、当初予定していた3d遷移金属における電子相関効果以外にも研究を展開することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
25年度までの研究によって、方法論に関しては十分開発が進んだので、今年度はハーフメタル強磁性体を対象とした研究を行う。すでにそのモデル構築についてはある程度の進展を得た。また。25年度には結晶の表面状態に関して新たな知見を得たので、ハーフメタル強磁性体あるいは強磁性体一般について、常磁性体金属との界面の性質についても研究を行い、より多角的な視点から本研究を進展させる。
|