研究課題/領域番号 |
24540344
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
中村 浩次 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70281847)
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キーワード | 表面・界面磁性 / 電界操作 / 第一原理計算 |
研究概要 |
1.電界操作による結晶磁気異方性の制御:ボロン不純物がFe/MgO界面に偏析した場合、結晶磁気異方性エネルギーの外部電場依存性が消失することがわかった。また、3d遷移元素のみからなる強い垂直磁気異方性を示す遷移金属薄膜の設計を行い、強磁性FeNi超格子薄膜(Fe/Fe/Ni/Fe/Ni/Fe/Fe)において巨大な垂直磁気異方性が得られること、金属フタロシアニン分子(MPc)における結晶磁気異方性を計算し、MnPcの場合、分子面に対して磁化容易軸が面直に、FePcとCoPcに対して面内方向になることを明らかにした。 2.電界操作による磁気依存伝導特性の制御: MgO基板上のFe単原子層膜に対する外部電場下における磁気依存伝導特性を調べた結果、外部電場印加により、フェルミ準位にあるd軌道のバンド構造が変化し、面内の直流電気伝導(及び異常ホール伝導)を変化することを確認した。しかし、フリースタンディングFe薄膜の結果と比較して、外部電場印加による変化が僅かであることがわかった。 3.電界操作による磁気弾性特性の制御:Cu基板上のFe二原子層膜において、実験で観測されているfct-like相とbct-like相に対し、前者では強磁性体構造が、後者では面内反強磁性体構造がエネルギー的に安定であること、これら二相共存は磁気構造の双安定性に起因すること、外部電場を考慮した場合、fct-like相とbct-like相間の相安定性の変化がないことがわかった。ノンコリニア磁気構造にも対応した表面界面系の弾性定数及びフォノン分散の第一原理FLAPW 法の開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.電界操作による結晶磁気異方性の制御:界面にボロン不純物が混入したFe/MgO界面の構造安定性と外部電場印加による結晶磁気異方性に関する計算を計画通り実施した。さらに、当該分野において極めて重要な課題である、①3d遷移元素のみからなる強い垂直磁気異方性を示す遷移金属薄膜を提案できたこと、②有機金属分子(金属フタロシアニン)の結晶磁気異方性の考察が可能になったなど、計画以上に進展している。 2.電界操作による磁気依存伝導特性の制御:外部電場下における表面界面系に対する電気・光伝導度の第一原理FLAPW法を開発し、MgO基板上のFe単原子層膜に適用するなど、計画通り実施できた。 3.電界操作による磁気弾性特性の制御:Cu基板上のFe二原子層膜に対して、fct-like相とbct-like相の二相共存が磁気構造の安定性に起因していること、外部電場を考慮した場合、実験とは異なるが、fct-like相とbct-like相間の相安定性が変化しない点を明らかにするなど、計画通り実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
1.電界操作による結晶磁気異方性の制御:これまでの研究で発見した巨大な垂直磁気異方性を持つ強磁性FeNi 超格子薄膜に対して、MgO基板を考慮した強磁性FeNi超格子薄膜の結晶磁気異方性と外部電場効果について調べる。新たな計画として、遷移金属薄膜のキュリー温度に対する外部電場効果についても検討する。 2.電界操作による磁気依存伝導特性の制御: MgO基板上の遷移金属薄膜に対して、外部電場下における電気・光伝導度の計算を実施する。 3.電界操作による磁気弾性特性の制御:Cu基板上のFe二原子層膜に対して、スピンスパイラル構造などのノンコリニア磁性を考慮した場合の構造と磁気構造の安定性を調べる。また、構造安定性に対する外部電場効果について考察する。ノンコリニア磁気構造にも対応した表面界面系の弾性定数及びフォノン分散の第一原理FLAPW 法の開発を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費や旅費等を節約したところ、当初の見積もりより少なくなったため 成果発表を行うための旅費等で使用する。
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