研究課題/領域番号 |
24540345
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
植田 浩明 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10373276)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フラストレーション / 電荷秩序 / ヤーンテラー効果 / フッ化物 |
研究概要 |
当該年度には、変型パイロクロアAV2F6、ACr2F6およびダブルペロブスカイトA2BTiF6、A2BVF6に関して、一連の化合物を合成し、その基礎物性を測定した。特に、ACr2F6とA2BTiF6に関しては、物性測定および物性の起源に関する解釈を、ほぼ完了した。一方、AV2F6とA2BVF6においては、おおまかな物性は明らかになったが、課題が残されている。 変型パイロクロアACr2F6について、以下のことが明らかになった。この系は、Cr3+とCr2+が反強磁性的に相互作用している磁性体である。低温の磁気転移に伴い、弱強磁性的な振る舞いを示す。また、比較的弱い磁場で、スピンフロップ的な転移を起こす。さらに、RbCr2F6においては、強磁場下で磁化プラトー的な領域が現れる。 ダブルペロブスカイトA2BTiF6は、d電子を一つ持つTiのヤーンテラー不安定性と、アルカリ金属イオンの大きさによって決まる格子の不安定性を持ち、これらの競合によって以下のように物性が変化することが明らかになった。アルカリ金属の種類により、五つの物質がダブルペロブスカイトとして得られる。これらの物質の格子の不安定性は、拡張されたトレランス因子によって評価することができる。この因子が大きい場合には、格子は安定で、ヤーンテラー効果が支配的になる。逆に、この因子が小さい場合には、格子由来の構造相転移が起こる、これらの中間では、複雑な相転移を示す。 AV2F6とA2BVF6については、それぞれ電荷秩序と磁気秩序の存在が判明した。しかし、合成条件の違いにより、物性が変化することが分かり、物性が変化する原因の究明と、純良な試料の作成が、今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、変型パイロクロアおよびダブルペロブスカイトの合成および物性測定の主要な部分を行うことができた。その意味では、研究の進展はほぼ順調であると言える。物性が明らかになったものに関しては、論文の出版に向けて準備中であり、A2BTiF6については論文を投稿中、ACr2F6については論文を執筆中である。 一方で、変型パイロクロアAV2F6とダブルペロブスカイトA2BVF6については、合成条件の違いにより、物性が変化することが分かった。これらの系に関しては、おおまかな物性は明らかにすることができたが、詳細を明らかにするためには、純良な試料の作成などが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、合成条件の違いにより物性が変化する、変型パイロクロアAV2F6およびダブルペロブスカイトA2BVF6に関して、物性が変化する原因の究明と、純良な試料の作成を行い、それらの物性を明らかにする。変型パイロクロアAV2F6は、Aサイトの欠損や微量の酸素の混入が、物性の変化の原因だと推定しており、これらの影響を検証する。ダブルペロブスカイトA2BVF6に関しては、Bサイトの相互固溶の影響を検証する。 また、ダブルペロブスカイトとしては、TiやVの他に、CrやFeなども知られている。さらに、秩序型ReO3構造を持つフッ化物は、遷移金属が面心格子を形成しており、同様の物理が期待できる。これらの系に関しても、研究を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
純良なフッ化物の合成に必要な、金や白金の容器などの消耗品や、物性の測定に必要な液体ヘリウムなどが必要であり、物品費は主にこれらに使用する。また、原料のフッ化物の精製装置を構築予定であり、これに必要な物品の購入も行う。旅費は、研究成果の発表のために、いくつかの学会に参加予定であり、そのために使用する。
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