研究課題/領域番号 |
24540348
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中野 博生 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 助教 (00343418)
|
研究分担者 |
轟木 義一 千葉工業大学, 工学部, 助教 (40409925)
|
キーワード | 量子スピン系 / ハイゼンベルク反強磁性体 / 厳密対角化法 / 大規模並列計算 |
研究概要 |
磁性体では系の性質に起因して様々な特徴が現れる。特に、フラストレーションを有する量子スピン系では、そのフラストレーションによって量子揺らぎが増大し、それが原因となって、古典系とは異なる様子がしばしば現れる。本研究では、量子系の理論模型に対し、偏りのない直接数値シミュレーション方法である厳密対角化法を用いて、そのような非自明な振舞いとその発現機構の解明を目的としている。2013年度、正方カゴメ格子と呼ばれる格子の上のハイゼンベルク反強磁性体の磁化過程を調べた。この格子は、正三角形の頂点共有という通常のカゴメ格子と同じ規則を持ちながらも、通常のカゴメ格子とは異なるネットワークを形成している。その結果、通常のカゴメ格子では全ての頂点が同等であるのに対して、正方カゴメ格子では、2種類の頂点が存在している。このような状況で、通常のカゴメ格子反強磁性体における飽和磁化の3分の1の高さに現れる磁場中異常現象と比して、この正方カゴメ格子ではどのような振舞が現れるか、ということに焦点を絞って研究を進めた。通常のカゴメ格子反強磁性体では、3分の1磁化の高さの、高磁場側の端で磁化が増加し始める時の傾きが非常に小さく、滑らかに増加し始める。それに対し、この正方カゴメ格子反強磁性体では、同じ高さの高磁場側の端で磁化ジャンプが発現することを見出した。この磁化ジャンプの起源を探るために調べた局所磁化の振る舞いが、この磁化ジャンプの前後で、スピンの方向に不連続な振舞いがあることを見出し、スピンフロップ現象の発現を指摘した。調べた系にはスピン空間に関して等方的であり、これまで、スピンフロップ現象は、スピン空間に関して異方性がある場合に発現する現象と広く考えられてきたことに対する反例となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カゴメ格子反強磁性体の磁化過程で、飽和磁化の3分の1の高さに現れる磁場中異常現象と考えられる磁化ランプの発現機構を検討する目的の下で調べた、異なる格子系の磁化過程に全く異なる磁化ジャンプを見出したことは、磁化ランプの振る舞いが、正三角形の頂点共有という特徴が起源ではないことを示している。また、この磁化ジャンプがスピンフロップ現象と関連するものであることを出来たことで、量子スピン系における新たなフラストレーション効果を明らかにできた。
|
今後の研究の推進方策 |
2次元フラストレート系における磁場中異常現象の特徴を焙りだす目的で、他の様々な格子系の様子を概観する。その比較の中で、磁化ランプや磁化ジャンプの振る舞いの発現機構に迫っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究分担者や関連研究者との研究打ち合わせを25年度に複数回実施しているが、予定変更のため、計画していた回数の全てを実施できなかったことなどから、26年度への繰越が発生した。 研究分担者および関連研究者との研究打ち合わせを緊密に行い、研究推進を加速させる。正方カゴメ格子とは異なる別の格子系での研究も進めており、その成果発表を順次進める。そのため、印刷論文の投稿経費(投稿掲載料、英文校閲料、別刷代)、各種研究集会での公表のための旅費などの支出を予定している。
|