研究課題/領域番号 |
24540351
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
元屋 清一郎 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60114683)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気構造 / 時間分割測定 / 中性子散乱測定 / フラストレーション / 磁化測定 / パルス中性子 |
研究実績の概要 |
本研究代表者は逐次磁気相転移を示す磁性体であるCeIr3Si2を低温相の温度領域に冷却すると、はじめ中間温度相の磁気構造が出現し、その後数十時間に渡って低温相の磁気構造に変化する現象を発見した。これは規則構造をもつ3次元磁性体で初めて観測された現象である。この研究の展開として本課題では (1)磁気構造の長時間変化が試料の不完全さに起因する不規則性によるものではないことを実証する。 (2)磁気構造の長時間変化の多様性の探求。 (3)パルス中性子散乱実験による時間変化測定の技術開発と短時間領域測定の実行。を目的として研究を開始した。 (1)については故意に乱れを導入した試料(Ce0.98La0.02)Ir3Si2を作成し巨視的測定と中性子散乱測定を行ない、観測された変化の特性時間とその温度依存性が規則系であるCeIr3Si2で観測された値と大きくは異ならないことを既に確認し、当初の目的を達成した。(2)については本年度は特に、Ce(Ir-Rh)3Si2 系の磁気相図の決定を行い、異なる磁気相間での時間変化の有無やその進行の特徴の関係を解明することに集中した。巨視的測定から強磁性成分を持つ相と持たない相との転移においてのみ顕著な時間変化が存在することが示唆された。これを受けて中性子実験による確認を今年度前半に行なう予定である。(3)についてはJ-PARCの装置を利用してCa3Co2O6の中性子散乱実験を行なった。この問題へのパルス実験の可能性を把握することができた。しかし、中性子の強度的な問題があり、本格的実験(特に磁場下での測定)は今後米国の施設(SNS)で行なう計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的(1) の磁気構造の長時間変化が試料の不完全さに起因する不規則性によるものではないことを実証する事項ついては既に完了し、論文や国際会議で発表した。 目的(2)についてはCe(IrxRh1-x)3Si2 系の磁気相図がほぼ完成した。この磁気相図と時間変化の有無の関係については巨視的実験はほぼ終了している。2015年6月にオークリッジ国立研究所において中性子散乱実験を行なうことが決定しており、この実験によってより明確に検証されることを期待している。 目的(3)パルス中性子散乱実験については大強度パルス中性子源(オークリッジ研究所のSNS)において本年度中に磁場中での実験を実施することを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り進める予定であるが、中性子実験については現状では(震災以降研究用原子炉が停止しているため)外国の施設に依存せざるを得ず、実験日数が不足している。国内の研究用原子炉の運転再開が研究の進捗の大きなファクターとなっている。原子炉の再開が遅れる場合には試料作成や巨視的実験に重点を置いた進め方となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内研究用原子炉が停止していたため国内出張旅費が余った。米国での中性子散乱実験のために予定していた旅費については日米科学協力事業予算からの支給があり本科研費では支出しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
国内原子炉の再稼働が実現すれば多くの実験日数が期待され旅費が必要になる見込みである。外国での実験と国際会議参加も予定しているので予算は適切に使用できると考えている。
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