研究課題/領域番号 |
24540352
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
伊藤 晋一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00221771)
|
研究分担者 |
横尾 哲也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (10391707)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 中性子非弾性散乱 / パルス中性子 / 低次元磁性体 / 強相関電子系 / 分解能関数 |
研究概要 |
本研究は、一次元量子スピン系等の動的構造因子をパルス中性子源に設置された中性子非弾性散乱装置で測定し、装置分解能を考慮して解析することにより、連続帯励起や量子相転移等の量子効果を検出するものである。J-PARC/MLFに設置された高分解能チョッパー分光器(HRC)のデータ解析系において、装置分解能の補正技術を開発し、これを用いてHRCで測定する一次元量子スピン系等の動的構造因子を解析する。中性子非弾性散乱実験は エネルギー(1次元)と運動量(3次元)の4次元空間で動的構造因子を測定する実験方法であり、4次元空間における分解能関数、及び、運動量は大きさだけを扱った2次元の分解能関数の解析的表現はすでに知られている。これらの分解能関数をコーディングし、その動作確認を行なった。単結晶試料の一次元反強磁性体CsVCl3及び(Nd,Ca)2BaNiO5の磁気励起をHRCで測定した。CsVCl3の磁気励起において、そのエネルギー幅が分解能よりも広く、低エネルギー領域では連続帯の存在を示唆する結果を得た。(Nd,Ca)2BaNiO5ではスピンギャップを観測した。今後、これらの励起スペクトルを今年度開発した分解能関数と比較することにより、量子効果について議論する。また、強磁性体La0.9Sr0.2MnO3及びSrRuO3の磁気励起を粉末試料を用いてHRCで観測した。粉末強磁性体のスピン波は、その動的構造因子の粉末平均により、(000)の近傍でしか中性子非弾性散乱強度を持たないが、HRCを用いると中性子非弾性散乱の運動力学的限界に迫ることができて、これらの物質のスピン波の検出に成功した。いずれの物質でも低温でのスピン波は、そのエネルギー幅が分解能関数で計算される値に一致することが示すことができた。さらに、粉末試料反強磁性体TiOBrの非弾性散乱実験も行なった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くの磁性体試料からの磁気励起を測定することにより、中性子非弾性散乱実験は順調にすすんだ。そのため、試料容器を製作した。単結晶試料を念頭に置いた4次元空間での分解能関数の計算動作の確認ができたのみならず、粉末試料を念頭に置いた2次元空間での分解能関数の実験的評価も成功した。これらの成果は、国際磁気学会で発表するとともに、論文発表を行なった。従って、研究はおおむね順調にすすんでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
HRCで単結晶試料及び粉末試料を用いて測定した磁気励起のスペクトルを、開発した分解能関数を用いて計算される磁気励起スペクトルと比較し、量子効果の検出をすすめる。また、ランダム一次元系の中性子非弾性散乱実験を開始し、データを集積する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
試料容器を製作し、中性子非弾性散乱実験をすすめる。解析およびデータ整理をすすめるためソフトウェアを導入する。これまでの研究成果を、中性子散乱国際会議、J-PARCシンポジム等で発表する。また、論文発表を行なう。
|