研究課題/領域番号 |
24540353
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河本 充司 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60251691)
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研究分担者 |
井原 慶彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80598491)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機伝導体 / 超伝導 / 電荷秩序 / FFLO / 13C-NMR |
研究概要 |
電荷異常を持つ超伝導体であるβ"-(BEDT-TTF)ガリウムシュウ酸塩の13C-NMRを行うため選択的に13C に置換されたBEDT-TTFを用いてβ"-(BEDT-TTF)ガリウムシュウ酸塩の単結晶の精製を行った。13C-NMR可能なサイズの単結晶を得ることができた。2つの多型が存在することがわかっているがX線を用いてβ"型であることを確認しSQUIDを用いて超伝導を確認、磁場中電気伝導度によりNMR測定磁場におけるTcをチェックした。 このようにして評価された単結晶を用いて13C-NMR測定を行った。その結果、超伝導転移温度以下の測定により、スピン磁化率が、転移後低温に向けて現象し、核磁気緩和率が、温度のべき乗に従うことがわかった。これはオーダーパラメータがd-波の対称性をもつシングレット超伝導であることを強く示唆する。過去の測定からこの物質の上部臨界磁場がパウリ限界を超えることが報告されており、このメカニズムの解明も重要な研究目的であるが今回のシングレット超伝導という結論はFFLOの可能性を示唆する結果となっている。 また超伝導転移温度Tcより上の常磁性状態において12 K付近に過去に報告された100 Kの異常とは別の電荷の異常が観測され、また核磁気緩和率の温度挙動から、Tc直上は非Fermi液体であることを見出した。Tc直上のこのような非Fermi液体の振る舞いは、超伝導発現メカニズムに強く関連していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度でβ"-(BEDT-TTF)ガリウムシュウ酸塩の超伝導対称性に関する測定および常磁性状態の測定を終了しオーダーパラメータがd-波の対称性をもつシングレット超伝導であること、非フェルミ液体の観測という成果をだすことができたことは計画が順調に進んでいることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
異常に高い上部臨界磁場のメカニズムの解明のためFFLOの可能性に関して知見得るために大型単結晶試料の作製を行いガリウムシュウ酸塩の高磁場での13CNMR スペクトルの測定を行う。 同型でガリウムの代わりに磁性をもつ鉄に置換したβ"-(BEDT-TTF)鉄シュウ酸塩の測定を計画していたが、スペインのグループとの共同研究として手持ちの13C置換BEDT-TTFをスペインに送り良質単結晶の提供を受けられることとなった。試料を届き次第この物質の測定も並行して行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 大型単結晶試料の作製や、スペインへ送る13C 置換BEDT-TTFの合成の経費、(2) ガリウムシュウ酸塩の高磁場での13CNMR スペクトルの測定は、学外機関で行うため、旅費、(3) 学内での測定のための寒剤や装置の改造、修繕費、成果発表のための旅費、登録料、英文校正に研究費を使用する予定である。
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