研究課題/領域番号 |
24540353
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
河本 充司 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60251691)
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研究分担者 |
井原 慶彦 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80598491)
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キーワード | NMR / 電荷秩序 / 超伝導 / FFLO |
研究概要 |
有機超伝導体β”-(BEDT-TTF)4 [(H3O)Ga(C2O4)3C6H5NO2は、常磁性相で電荷不均一が見つかっており、理論から提唱されている電荷の揺らぎを介した新しいタイプの有機超伝導体である可能性が示唆される。この電荷の自由度に加えパウリ限界を超える上部臨界磁場が実験で報告されている。 昨年度は、(1) 秩序パラメータの対称性が、スピンシングレットのd波超伝導であることを明らかにしたが、本年度は、昨年度発見した超伝導直上の異常に関して常磁性電子状態の特性を片側置換13C-NMRの手法を用いて調べた。 β''-Ga塩の高磁場NMR測定をグルノーブル(フランス)の高磁場実験施設との共同研究で行った。高磁場の実験から低磁場では、10K以下で線幅の増大として観測されていたピークは、2本のピークに分離していることがあきらかになった。この2本のピークの角度依存の測定より、電荷のリッチなサイトとプアなサイトであることが定量的に解析された。電荷は、 それぞれ0.6e と 0.13eと見積もられた。また、これらのピークの強度比から、サイトの比が単純な1:1の分離ではなく 3:1であることがわかり、このことから電荷分離のパターンに関して考察を行った。 これらの大きな電荷の分離は、超伝導状態においても観測された。電荷の分離と超伝導の共存するが、実証された例は、有機超伝導体では初めての例であり、電荷付近化がこの物質の高いHc2と関連していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的に記載した。超伝導の対称性に関しては、昨年度の研究で明らかになった。その過程で超伝導直上の異常を発見したがその詳細に関してはスペクトルの分解能の問題で曖昧な点が多かったが本年度の高磁場の研究からその詳細が、大きな電荷の分離でありそれが超伝導と共存していることが分かった。これは、研究目的の"片側置換13C-NMRを使って電荷のゆらぎ等の常磁性電子状態の特性を調べ" に対応する部分でこれらの成果からおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的の残された課題である高いHc2の原因の解明であるが、今年度は、フランスのグルノーブルの高磁場施設で30Tの実験が計画されておりこの実験と今までの成果から申請の研究目的をクリアできると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
3月の学会の旅費分の繰り越しです。 4月に清算
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