有機超伝導体β”-(BEDT-TTF)4[(H3O)Ga(C2O4)3]C6H5NO2は、常磁性相で電荷不均一が見つかっており、理論から提唱されている電荷の揺らぎを介した新しいタイプの有機超伝導体である可能性が示唆される。この電荷の自由度に加えパウリ限界を超える上部臨界磁場が実験で報告されている。 昨年度までは、(1) 秩序パラメータの対称性(2) 超伝導直上で電荷は、 それぞれ0.6e と 0.13eの電荷分離があることを発見し。また、これらのピークの強度比から、サイトの比が単純な1:1の分離ではなく 3:1であることがわかり、このことから電荷分離のパターンに関して考察を行った。 本年度は、この物質の同形物質であるβ”-(BEDT-TTF)4 [(H3O)Fe(C2O4)3]Y のNMRを中心に研究を行った。この物質は、非磁性のGaサイトを磁性イオンであるFe塩に置き換えた物質でFeの局在スピンが超伝導にどのような影響を及ぼすかに興味が持たれている物質である。13C-NMRのシフトの考察からFeスピンとBEDT-TTF分子の間に負の交換相互作用があることを明らかにした。また、東北大学金属材料研究所の高磁場NMR装置を用いてFeスピンのダイナミクスに関してスピン格子緩和時間の温度変化のデータを用いて解析してそのダイナミクスを明らかにした。その結果、負の交換相互作用と高磁場でFeのダイナミクスから磁場誘起超伝導の可能性があることを明らかにした。
|