研究課題/領域番号 |
24540354
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中西 良樹 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70322964)
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キーワード | 超音波 / 強磁場 / 四重極モーメント / 秩序変数 / 一軸圧力 / 複合極限環境 |
研究概要 |
本年度は、昨年作成した微小空間における超音波測定装置を用いて、新たな物質群の研究を推進した。具体的には籠状物質重い電子系であるPrTr2Al20 (Tr: V, Ti)および正方晶物質RRh2Si2 (R: Ce,Eu)について実施した。特に、後者については本研究実施計画には無かった項目であり、研究を進めて行く中で得られた新しい実験内容および結果である。両者について紹介する。PrTr2Al20は極低温で非磁性転移を生じる物質である。本研究グループも含め、この低温秩序相が四重極秩序であることをこれまで報告してきた。PrV2Al20に関して、磁化率および磁化測定では、極めて小さい異常のみ観測されていた高磁場相境界で、弾性定数および超音波吸収に極めて大きな異常が出現することを初めて明らかにした。その結果、この高磁場相は磁気的な秩序変数ではなく、電気的な秩序変数の変化に起因した相であることが明らかになった。更に、同じ結晶構造を有するPrTi2Al20について、転移温度の違いから(PrV2Al20の転移温度の約3倍)、更に強磁場下での超音波測定を実施し、同様の高磁場超音波測定を実施した。高磁場領域の明瞭な秩序相観測には至らなかったが、秩序相で期待される転移磁場付近に弾性異常を観測した。 今回の研究で計画している一軸圧力セルを、昨年の様に金属ではなく特殊プラスティックを用いて今年度は製作した。これを用いることで、パルス強磁場下での一軸圧力下超音波測定を可能にした。今年度はRRh2Si2 (R: Ce,Eu)について実験を実施した。EuRh2Si2は一軸圧力印加とともに秩序相で観測されるメタ磁性転移磁場が高磁場側にシフトすることを明らかにした。更にCeRh2Si2では、秩序相で観測される相境界に伴う臨界磁場で明瞭な弾性異常を初めて発見した。更に、この一軸圧力依存性についても観測し、その起源について現在検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画していた物質群について順調に超音波測定を実施していると同時に、新たな課題と実験計画が加わり、更に研究内容に拡ろがりがみられる。特に、ドイツ連邦共和国HZDRでの実験は大変重要な結果をもたらしてくれたと同時に、世界的な研究ネットワークの構築に大きく寄与出来たと考えられる。今後もこのネットワークの一員として本研究の拡大、あるいは新テーマ探索に努めていく次第である。こうした現状から、本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる平成26年度は、これまで得られた実験結果の物理的解釈および、更に必要な実験データの補間収集を今後行っていく。具体的にはCeRh2Si2のパルス強磁場および一軸圧力下での超音波測定、更にPrTi2Al20のパルス強磁場下超音波測定を、より低温領域で実施する予定である。最終年度となるため、学術雑誌への投稿準備も実験と並行して進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者がサヴァティカル研修により本国を不在にしていたため、助成金を次年度に繰り越すことにした。 前年度購入予定であった研究装置は、本年度購入予定である。この措置によって研究計画の進捗に大きな影響を与えることはない。
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