研究課題
本研究でターゲットとしたYb4LiGe4の母物質であるYb5Ge4は比熱、帯磁率の温度依存性において、反強磁性転移温度である1.8K以上にブロードな異常が現れる。磁化過程においても、転移温度以上でメタ磁性的な振る舞いが残るという特徴を持っており、低次元磁性体である可能性を見出した。そこで、Yb5Ge4の単結晶試料を用いたX線回折異常分散効果測定(DAFS)を高エネルギー物理学研究所にて実施した。その結果、斜方晶の結晶構造中に3種類存在する、Ybサイトの1つを磁性イオンであるYb3+が占め、残り2つを非磁性のYb2+が占めることを明らかにした。一方、Yb5Ge4は典型的な近藤半導体とよく似た電気抵抗の温度依存性を示す。Yb5Ge4が近藤半導体である可能性を探るために、c-f混成の度合いを変調できる、高圧力下での電気抵抗測定を行った。加圧に伴い、特に低温領域で電気抵抗値は著しく減少するものの、8GPaという高圧力下でも金属化するには至らなかった。このことから、Yb5Ge4の半導体的挙動には、近藤効果が主体的な役割を果たしている可能性は低いと考えられる。よって、比熱、帯磁率に現れた異常は、近藤効果というよりはむしろDAFS測定により明らかとなった、磁性イオンの低次元的な配列がその起源と考えることができる。さらに、Yb5Ge4と同型の結晶構造をとるYb5Si4を作成し、基礎物性を調べた。Yb5Si4の物性はYb5Ge4に酷似しており、イオン価数の釣り合いは多少異なるものの、同様に低次元磁性体に特徴的な比熱、帯磁率の温度依存性を示すことが明らかとなった。また、電気抵抗率はYb5Ge4に比べ著しく小さいが依然として温度変化は半導体的であった。本研究により、Yb5Ge4においてはYbイオンの電荷秩序が室温で既に生じており、Yb3+磁性イオンの低次元的なネットワークが特徴的な物性を示す起源であることをマクロ・ミクロ測定の両面から明らかにすることができた。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 592 ページ: 012092 (1-6)
10.1088/1742-6596/592/1/012092
http://mag.phy.saitama-u.ac.jp/doku.php?id=researches:yb5ge4